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紙が塗り替える風景
私たちの暮らしに欠かせない紙。
「こんなところにも紙が使われている」、「こんな用途が紙で代替できる」、「ちょっとした工夫を加えて新たな価値が生み出される」など、“紙の意外な表情”に迫ります。

2008.11更新
子供もお年寄りも楽しめる段ボール製の室内遊具


 積み木をヒントに作られた段ボール製の大きな遊具。
 子供が楽しく遊べるのはもちろんだが、
 一方でお年寄りの集まる施設にも導入され始めている。
 子供もお年寄りも楽しめる、そのポイントはどこにあるのだろうか。
 
室内で安全に「体を使った遊び」を実現

  株式会社ファイブフォース(東京都台東区)で販売している「もちづき先生の段ボール積み木」は、考案30年を超えるロングライフ商品である。大きくて軽い段ボールの箱を積み重ねて、積み木の要領で遊ぶほか、ジェンガのように積み上げてバランスを競うゲームや、ドミノ倒しに使っても面白い。遊びを通して、指先にとどまらない、身体の大きな動きを誘い出すのがこの段ボール積み木の特徴だ。

  考案したのは、東京藝術大学名誉教授で帝京平成大学健康メディカル学部教授の望月積さん。息子さんがまだ小さい頃、雨の日に家の中で気兼ねなく遊べる方法が少ないことに気づいて、「室内でもわんぱくに体を使って遊べないだろうか」と思ったのがきっかけだった。
 そこで当時、製紙会社のデザイン室長を務めていた望月さんは、紙で積み木を作ることを思いつく。段ボールでレンガ型の試作品を作ってみたところ、息子さんも喜んで遊び、またケガをしたり部屋を傷める心配もなく、具合がいい。そこで試作品500個を用意し、息子さんが通う幼稚園に持ち込んでみた。

  「レンガ大の段ボール積み木を500個積み上げると、小山のようになるんですね。 そこに“遊んでいいよ”と声を掛けたとたん、子供たちがワーッと飛び込んだんです。紙だからクッション性があって危険がないことを、一瞬にして理解してもらえたのが印象的でした」

  このレンガ型積み木は5×10×20cmというサイズ。レンガのように幾通りかの方法できっちり箱に詰めることができるため、片付けさえもがパズルのような遊びになる。こうしてレンガの数理的な特徴を生かした「知育」、身体を動かす「体育」、片付けを通した「徳育」の3要素を備えた段ボール積み木は商品化され、今も全国の幼稚園などから注文が相次いでいる。

  一方近年では、安全に体を動かす遊びができることから、高齢者の健康増進への効果が期待されている。そのため、デイケアセンターなどのレクリエーション用品として、この段ボール積み木が活用されているケースもあるという。
  「子供と違って大人の場合は、遊び方を提案した方がいいようです。グループ対抗で積み木を一定の高さまで積み上げる速さを競うとか、バラバラに置いておいた積み木を箱の中に収める速さを競うなど、競争しながらゲーム感覚で遊ぶ方法を提案すると、みなさんが“次はもっと速くなるよう頑張ってみよう”と熱中していく傾向がありますね」(望月さん)

  現在、望月さんは帝京平成大学の作業療法学科で、段ボール積み木を使った遊びが認知症の改善や高齢者の介護予防に及ぼす効果について、検証を行っている最中だ。
  「認知症のお年寄りに使ってもらうと、積み木が崩れたりするふとした瞬間に、それまで表情が乏しかった人が笑顔を浮かべたり、遊んでいるうちに血色がよくなったりといった変化が見られます。今はまだデータを集めている段階で、結果を出すには至っていませんが、そうした様子を見ていると、認知症改善や介護予防の可能性は十分考えられるのではないかと思います」

  長年にわたり、環境や身体性に着目した遊具や公共物を多数デザインしてきた望月さんだが、「人と社会のよりよい未来のためにデザインする」という思いは年々強まっているようだ。
  この積み木も、入手もリサイクルも容易な紙という素材に、ありあまる思いを込めたからこそ、時代を超えて支持される製品になり得たのではないだろうか。

●石田 純子(ライター)


お問合せ先
日本紙パルプ商事 広報課 03-5201-6216


「もちづき先生の段ボール積み木」の一例。パズルのように組み合わせると箱にぴったり収まるので、片付けも遊び感覚で行える

ペイントした段ボール積み木を前にした望月さん。デイケアセンターなどでは自ら遊び方をレクチャーすることも多い


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