マシーンから注がれる淹れたてのコーヒーがブームになって久しい。
テイクアウトできる店も増え、カップを手にして歩く人を日常的に見かけるようになった。
そのカップを効率的に運べるホルダーは紙でできたものが多い。
そこでホルダーの成り立ちや構造に改めて目を向けてみた。
1つか2つなら手に持てば事足りるコーヒーのカップも、3つ4つとなると、カップを支えるトレーのような容器が欲しくなる。多くの店ではそんなときのために、持ち運び用のドリンクホルダーを用意している。
紙製のドリンクホルダーを企画し、コーヒー店などに納入している株式会社シモジマ(東京都台東区)によれば、ドリンクホルダーで最も重視されるのが、素早く組み立てられることだという。
「コーヒー店ではお客様が行列を作ることも多いので、組み立てに手間がかかるものはやはり敬遠されます」(シモジマ第4商品部部長・上田英男さん)
同社が販売するドリンクホルダーのなかでとりわけ目を引くのが、カット済みの厚紙を軽く丸めるだけで、カップを2つまでホールドできるもの。カップの底がホルダーの下部から飛び出す形だが、持ち運ぶ際の安定性もよくスタイリッシュであることから、他店との差別化を意図するコーヒー店に好まれている。側面にスタンプを押したり、シールを貼ったりして手軽に好みのデザインにできるのも面白い。
もちろん、同社では他のドリンクホルダーも扱っている。もっともオーソドックスな製品は7年ほど前に発売した、カップが最大4つ運べるボックス型の紙製ドリンクホルダーだ。コーヒー好きな人ならば一度は目にしたことがあるのではないだろうか。
さらに2017年末には、カップが1つでも傾きにくく、安定して運べるボックス型のドリンクホルダーを発売した。上から見ると3つの円を並べた形の穴があり、真ん中の穴にカップ1つを入れて使用するほか、両端に2つのカップを入れて使用することもできる。
これは出張で新幹線に乗ることの多い上田さん自身の経験を生かして考案されたもの。ドリンクホルダーを袋に入れても傾きにくいので、荷物が多いときでも運びやすい。
設計のアイデアを出したのは、同社第1商品部課長の梅津直樹さんだ。組み立てやすくコーヒーをしっかりと支えられる強度があり、使い終わったらサッと畳んでリサイクルできるように設計した。
素材にはマイクロフルートというごく薄い段ボールが使われている。段ボールは丈夫なだけでなく、リサイクルシステムが確立されているため、資源循環型社会に即しているというメリットもある。
ドリンクホルダーに求められる条件は、カップをしっかり支えるという本来の役割だけではない。「素早く組み立てられる」「保管スペースをとらない」「コストが安い」といったシビアな条件を満たした製品でなければ、なかなか定着しないという。そのため設計は一筋縄ではいかないようだ。
「紙は樹脂のように自由に成形できるわけではないので、強度を保ちながら条件に合った形状にするのは難しく、試行錯誤してばかりです。でもだからこそ、求める形ができたときはうれしいですね」と上田さん。
そうした努力とテイクアウトコーヒーが買える店の増加によって、シモジマで扱うドリンクホルダーなどのコーヒー関連の資材は、近年、出荷数を伸ばしているという。
「とくに最近は樹脂製よりも紙、さらに白い紙よりも未ざらし(無漂白)の茶色がかった紙でできた製品が好まれる傾向にあります。よりナチュラルな素材が注目されているのです」(上田さん)
まもなく温かなコーヒーが恋しくなる季節がやってくる。その周辺をコーヒーの液色にも似た、未ざらしの紙が彩る場面はますます増えていきそうだ。
ライター 石田 純子
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