日本紙パルプ商事は、紙・板紙を中核とした多角的でグローバルな事業を展開しています。紙の需要は、電子化・ペーパーレス化等の影響で減少が続いていますが、近年では環境負荷の低い特性が再評価され、素材の温かみや、実際に所有することで生まれる幸福感など、紙の新たな価値や役割が見直されてきています。当社グループは、このような紙の価値を再認識し、新たな価値の創造に挑戦を続けるとともに、循環型社会、持続可能な社会の実現に貢献していきます。
当社が2018年3月期~2020年3月期に実施した「中期経営計画2019」において、近年改定した紙・板紙の価格を堅持した「国内卸売」や、「製紙及び加工」「不動産賃貸」のセグメントでは、目標を概ね達成できました。2019年3月期には、過去最高の経常利益を実現した一方、2020年3月期に「海外卸売」「資源及び環境」のセグメントにおいて大幅な経常減益となり、最終目標としていた連結経常利益130億円は未達となりました。特に「海外卸売」セグメントでは、戦略市場におけるM&Aの実施により、グローバルレベルで当社グループの確たるポジションを固めていくプラットフォームを築き、売上高が増加したことは大きな成果の一つですが、結果としては経常損失となりました。減益の主な要因は、海外市場での市況品種の価格下落による粗利の大幅な減少や、M&A関連一時費用の発生などによるものです。加えて、海外グループ会社における在庫の評価損および貸倒引当金を計上していますが、これは、「中期経営計画2019」に掲げた「不採算事業・部門の見直しによる合理化」の結果であり、今後の利益回復につながるものと考えています。
私は、グループのあるべき姿として3つの柱からなる企業像を描いています。1つ目は、「世界最強の紙流通企業」としての企業グループ、それは、国内で圧倒的ナンバーワンであるポジションをより強固にすることにもつながります。2つ目は、グループ企業理念を重んじた循環型社会の構築を強く意識する企業グループです。従来の循環型社会づくりの推進に加え、SDGsの17ゴールと向き合い、経営の羅針盤にしていきたいと思います。全役職員には、グループ企業理念を尊重し、当事者意識を強く持ちながら、自己選択によって、常に「Something New」を目指し、満足感・充実感を高めてくれるよう望みます。3つ目は、紙業界とそのサプライチェーンという枠を超え、広く認知され、評価されるエクセレントカンパニーになることです。そのために、従業員が満足感、充実感、そしてワクワク感を感じることのできる企業風土をつくると同時に、ビジネス面でも新たな6本目の柱を築きたいと考えています。
当社グループは、新しい中期経営計画を2020年4月にスタートする予定でしたが、新型コロナウイルス感染拡大の影響により、始動は2021年4月まで延期することを決断しました。2021年3月期は、まずは単年度の収益保全・向上に注力し、市場価格の堅持をはじめ、ミクロな視点に立ったコスト削減の徹底、ニューノーマルに向けた需要・商機・事業・投資機会などを探求し行動してまいります。また、当社の強みである創業から175年に及ぶ歴史で築いてきたお取引先様との深い信頼関係と、紙業界をはじめとした各分野での豊富な経験や人脈といった資産の有効活用を考えていきます。つまり、従業員一人ひとりが、あらゆる情報に対して、センシティブに思考の幅を広げ、お取引先様間の仲介はもちろんのこと、持続可能な社会の構築に関連する「環境保全」「少子高齢化」「豊かな暮らし」などをキーワードに、積極的に提案していくことで、お取引先様や私たちが持つリソースとの間に化学反応を起こし、「Something New」を生み出していくことを目指します。
私たちがグループ企業理念のなかに示す当社グループの使命は、社会と地球環境のよりよい未来を拓くことです。この使命を全うし、これからもステークホルダーの皆様のご信頼とご期待にお応えしていきます。
2020年7月
代表取締役社長