来年のカレンダーが気になる季節がやってきた。
デザインの善し悪しや実用性をあれこれ吟味しながら、翌年1年間のパートナーになるカレンダーを選ぶのは楽しいもの。
中でもひときわ個性的で、思わず二度見してしまうカレンダーをここで紹介しよう。
壁掛けカレンダー、卓上カレンダーなどいろいろなタイプのカレンダーがある中で、まず思い浮かべるのは、平らな紙に日付や絵柄が印刷されたものではないだろうか。
しかしここで取り上げるのは、ブロックメモの一辺を斜めにカットし、その断面に文字が浮かび上がるカレンダーだ。メモを切り取るたびに日付の文字が上から削れてしまうのでは……との心配はご無用。一枚一枚のメモにカレンダーが印刷されているので、メモを使い切るまでカレンダー機能が維持される。
他に類を見ないユニークさゆえに目を引くこのカレンダーは、2014年に日本文具大賞を受賞。その後、テレビの人気番組や雑誌で紹介されて話題を呼んだ。現在は国内外のショップで販売されるほか、ノベルティグッズとしても好評を博している。
企画製造を行っているのは株式会社大成美術印刷所(東京都中央区)で、カレンダーのほかブロックメモやノートも含め、斜めカットを特徴とした紙製文具を「ななめもーる」のブランド名で多数展開している。
その原型が産声を上げたのは20年以上前のこと。顧客企業から、ブロックメモを斜めにカットして断面に文字や図柄が浮かび上がるものをつくれないか、と相談されたのがきっかけだった。
「ほかにも何社か製造を打診したものの、断られてしまい、当社に相談されたようです。さっそくトライしてみたところ、印刷と紙加工の両方でノウハウと技術力が必要だとわかりました。幸い当社ではいずれも内製していますので、形にすることができましたが」(大成美術印刷所 代表取締役社長・新保大八さん)当時つくられたのは、斜めカットの断面に企業のロゴが浮かび上がるもの。その後年月を経て、同様の技術をノベルティ用のカレンダーへと展開したところ、じわじわと人気が出てリピート発注が相次ぐようなった。
カレンダーの印刷は、紙の「断面」に施されているのではなく、一枚一枚の紙の「表面」に印刷されたものが、カットした面からつながって見えている。そのため、紙の伸縮が不均一だと断面がでこぼこになり、印刷した文字が途切れたり隠れたりしてきれいに仕上がらない。それを防ぐには品質管理を厳密に行い、仕上がりの精度を上げる必要があり、また使用する紙も品質が安定しやすい種類に限られる。
製造は国内工場のほか、ベトナム工場でも行っているが、その場合も用紙は日本から持ち込んで供給している。
「現地で入手できる紙も試しましたが、色みや安定性など、やはり日本製の紙のほうがこの製品向きなんです。日本の紙はよくできていますね」と、新保さん。
「ななめもーる」のカレンダーが前述の日本文具大賞を受賞した後、大きな変化が訪れた。複数の小売チェーンから声がかかり、また前後して公共団体による海外展開の支援があったことから、それまでノベルティなどのB to Bのみで事業展開してきた大成美術印刷所が、初めてB to Cへと進出し、店舗販売用の商品を製造することになったのである。
近年は「ななめもーる」の技術を用い、ドーナッツなどの食べ物を模したメモシリーズも製造展開するようになった。このメモシリーズは現在、国内はもとより北米や欧州の有名店にも置かれている。
アイデアと技術をのせた紙が、人や会社を新しい領域へと導くことがある。
「ななめもーる」がショップで販売されるようになり、「参入して日の浅いB to C市場で何が好まれるのか、どんなタイミングでPRをすればいいのか、まだまだ手探りのところは多いです」と新保さんは言う。しかしそこにはしっかりとした手応えがあるようだ。
ライター 石田 純子
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