オレンジやブルーのストライプが美しい木の家具。
このカラフルな極細のラインは、なんと紙の色だという。
木材と厚紙を重ねて合板を作り、その板を切ってできた断面を生かしたものだ。
この「紙を使った合板」というユニークな素材は、どのようにして誕生したのだろう。
この合板は使用した厚紙の名前「クローバーボード」にちなんで、「クローバー合板」と呼ばれる。ラワンやシナをスライスした薄い板の間にクローバーボードを挟み、合板用のプレス機を使って接着させたものだ。組成は木材7に対して紙3の割合。生みの親はデザイン事務所のDRILL DESIGN(東京都目黒区)で、この合板を使って制作した椅子「クローバーチェア」を2008年秋の展覧会で発表している。
誕生のきっかけは「無垢の木よりも物性が安定していて価格も安い合板を、もっとうまく利用する方法はないか」と考えたこと。日頃インテリアや工業製品のデザインを手がける同社では、合板を扱う機会も多く、その際に板を切ったあとの断面をどう処理するかに頭を悩ませるのが常だったという。というのも、合板の素材の積層があらわになる断面は、一般的には決して好まれるものではないからだ。
「断面を隠すためにテープを貼ったりしていましたが、隠すのではなく、むしろ魅力的に見せる方向で面白いことができないか考えるようになりました。そこで板の間に異素材を挟んで、断面にストライプのできるオリジナルの合板を作ることを思いついたのです」(DRILL DESIGN/プロダクトデザイナー・林裕輔さん)
さっそくフェルトやアクリルボードなどの素材を板に挟んで数種類の試作品を作ってみたところ、厚みや色の鮮やかさがイメージに近く、加工もしやすいのが「紙」だった。 「合板にした紙は木と同様の伸縮性があるので、曲げ加工もできるし、カンナを掛けたり磨いたりすることもできる。また機能面だけでなく、色のバリエーションが多くて選びやすいという長所もあります。最初はアクリルがうまくいくんじゃないかと予想していたのですが、アクリルは曲げるとはがれやすくなったりして扱いが難しい。やはり紙は木からできているので、木との相性がいいのでしょうね」
紙を加えて製作した合板は、木材だけの合板よりも軽いという長所がある。半面、積層に対して垂直方向に引っ張る力には弱い。しかしそれも椅子などの家具ならば、力のかかる方向を考慮して設計することで十分克服できるという。 そのため今後はこのクローバー合板を使い、椅子のほかにテーブル、棚、卓上小物などのシリーズを制作する計画もあるそうだ。
紙によってカラフルでポップな表情が加わった合板は、作り手の想像力をかき立て、見る人の驚きを誘う。「可能性を秘めた素材だと思います」という林さんの言葉に、強く同感した。
ライター 石田 純子
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