脱いだ上着や帽子を掛けるコートハンガーは
冬場に出番の多いインテリアでもある。
しっかりとした造りが求められるだけに、素材は木やスチールが主流だが、
樹木のように優しい表情の紙製コートハンガーが現れた。
「ハンガーツリー」という名のコートハンガーは、名前通り、地面に根を張り、天に向かって枝を伸ばす樹木のような形をしている。表面に光触媒加工がしてあり、周りの空気をきれいにする作用があるのも、樹木とよく似ている。
このハンガーツリーの素材は、再生紙でできた紙管だ。太さと長さの異なる数種類の紙管を組み合わせて、アルミ製のアダプタでつなげて形を作る。使う人が自由に組み立てて、好きな形の「木」を作ることができるのが面白い。
この製品を製造している株式会社トレンドゲート(神奈川県川崎市)は、もともと物流用の紙製パレットの輸入販売を行っていた。
「海外では木材の使用規制が厳しく、木製パレットに代わるものとして紙製パレットが増えています。紙といっても4トンもの重さに耐えられる堅牢な厚紙で、紙は柔らかいものだと思っていただけに、初めて見たときは驚きました。そしてこれだけ丈夫なら、ほかの用途に使えるのではないかと思ったのです」と、同社代表取締役の小木曽聡さんは語る。
そこで「リサイクルできる素材を使って生活を豊かにするものを生み出そう」という理念のもと、ベッドや椅子などを試作してみたが、なかなか納得のいくものにならない。試行錯誤を重ねる中、工業製品や舞台空間のデザインを手がけるデザイナーの石黒猛さんに出会ったことが、新たな展開につながった。同社の理念に共感した石黒さんから「紙管を使ってコートハンガーを作ってみてはどうか」というアイデアが出されたのである。
ネックになったのが紙の伸縮である。アルミのアダプタと紙管のジョイント部分は当初、茶筒のように円筒形の部品同士をまっすぐ差し込む形を想定していた。しかし紙が湿度差によって伸縮するため、口径に誤差が生じて差し込み口が安定しない。そこでアルミアダプタの差し込み口をスクリュー状に変更し、ねじりながら紙管にかみ合わせていくことで、しっかりと固定できるように改良した。
「他にも紙管の太さやアダプタの形状などを変えて何度も試作を重ねたため、アイデアが固まってから完成品にこぎ着けるまでに1年ほどかかってしまった」と、小木曽さんは苦笑する。しかし試作にかかるコストや作業期間が少なく、納得のいくまで変更ができるのも紙ならではの利点だろう。
こうして完成したハンガーツリーは、2010年春から販売を開始する予定だ。ブランド名としてつけた「ReVi(リビ)」は「recycle-リサイクル」と「vivid-ビビッド」の頭文字を組み合わせた造語。「リサイクルできる素材を使い、遊び心のある豊かな生活を創造する」という同社の理念が込められている。
トレンドゲートでは今後もReViブランドのもとで積極的に製品開発を行っていく予定だが、「その素材として当面の間は『紙』に注目したい」と小木曽さんは語る。
慣れ親しんだはずの紙にひそむ「堅牢さ」という性質に、時代が新たな光を当てている。
ライター 石田 純子
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