かつては夢の未来を象徴する存在だったロボット。
それが自動車メーカーや家電メーカーなどによって
次々と発表、実用化されている。
その中に、機械らしからぬ温かみをもった紙製のロボットが現れた。
身長179cm、体重6kg。これがその紙製ロボットの「体格」である。女性の体形に似せた外装部分は、切り込みの入った段ボールを縦横に組み合わせて立体的に形作ったもの。その首、肩、腕には関節があり、モーターで動かせるようになっている。
滑らかな曲線でできた紙の体がゆっくりと動くさまは、「ロボット」から連想される機械的な動きではなく、ダンスの達人のように優雅な印象だ。
このロボットは製品名を「D+ropop(ディーロポップ)という。段ボール、デジタルのDに、ロボット(robot)とPOP広告を組み合わせた造語だ。名前が示すように、ウィンドーディスプレイなどに利用する販売促進用の装置として考案された。
製造・販売を行っている株式会社イーガー(大阪市北区)は、オーディオなどの家電に内蔵されるマイコン制御システムを開発している企業である。このロボットの開発には、新たな事業分野を開拓するために取り組んだという。
その経緯を説明してくれたのは、開発メンバーの一人、イーガーの企画課に所属する山下剛さん。自社の得意分野であるマイコン制御システムをロボットの動作に生かし、外装部分は、段ボールの立体造形を手がける有限会社アキ工作社(大分県国東市)に提供してもらい、異業種コラボレーションによって、このD+ropopは完成にこぎ着けた。
ロボットの素材に紙を使うという斬新なアイデアは、「見る人に親しみをもってほしい」と考えて生まれたもの。
「金属やプラスチックでできたロボットには、やや冷たい、受け入れがたいイメージを持つ人もいるのではないかと。
ちなみにこのD+ropopの販売価格は1体47万円から、レンタル料金が1週間で15万9000円から。他のロボットと比べ、1~2桁少ない料金設定に収まった。
今年に入ってからは、銀座のファッションビルのウインドーディスプレイとして、2か月にわたり展示されたこともある。
「ファッションのように、従来であればロボットとの組み合わせが考えにくかった商材とも相性がよいのは、紙がソフトな印象を与えるからではないかと思います。女性の反響が大きいのも、このロボットならではの特徴かもしれません」
また、段ボール部分にはペイントを施すなどのアレンジができる。デザインを変えたいと思えば、モーター部分はそのままに、紙の外装だけを取り替えることもでき、イメージチェンジも手軽だ。もちろん、使わなくなった段ボールはリサイクルに回してもよい。
「モーターのリユース、段ボールのリサイクルのほか、使っている素材の量、使用電力ともが少ないのでリデュース(排出抑制)になり、3Rが当てはまる。環境を考えたロボットなんです」
ところで開発元、イーガーの位置する大阪府では、ヒューマノイドロボットの開発が盛んで、実用化も早い。
「大阪人のものづくり精神、そして新しモノ好きな気質が、ロボット開発というテーマとぴったり合ったのかもしれませんね」と、山下さんは推測する。
最先端技術のロボット、そして人が昔から慣れ親しんできた紙という素材。それらが出合う事によって、時代に即した個性的で新しい製品が生まれた。
ライター 石田 純子
このコラムに掲載されている文章、画像の転用・複製はお断りしています。
なお、当ウェブサイト全体のご利用については、こちら をご覧ください。
OVOL LOOP記載の情報は、発表日現在の情報です。予告なしに変更される可能性もありますので、あらかじめご了承ください
日本紙パルプ商事 広報課 TEL 03-5548-4026