お祝い金を包むのに使う祝儀袋は、
贈る人の気持ちを伝えるのに役立つ
日本独特の作法のかたちである。
そのデザインに現代的な解釈を加えた祝儀袋が登場した。
「折水引」という名前の祝儀袋がある。中身を包んだあとに水引を「かける」のではなく、名前が示す通り、包む紙の一部を型抜きして折り、赤やピンクの紙裏をのぞかせることで水引とのしを表現したものだ。
一枚の紙から立体的な水引やのしが立ち上がるさまが面白く、また要素を極限までそぎ落としたシンプルな美しさも感じさせる。
形は「結び切り」と「蝶結び(丸・角)」の3種類、色はそれぞれ紅×白とピンク×白の2種類、計6種類が揃い、かみの工作所(東京都立川市)から販売されている。
この折水引をデザインした大友賀公さんは、はじめ「赤」をテーマに、かみの工作所の製品展示会に出展する作品制作の依頼を受けた。そこで「赤から連想される」「長い間使い継がれていく可能性がある」「紙で制作する必然性がある」ことを重視し、それにふさわしい品物として祝儀袋を選んだが、せっかく作るからには紙の新たな表情を引き出しつつ、広く人々に受け入れられる祝儀袋にすることを目指したという。
試作段階では、結び切りや蝶結びの抜き型を作り、8種類ほどの紙を実際に打ち抜いて検討を進めた。つるつるしたコート紙やイタリア産の紙なども試したが、最終的には細かなシボのある和風の紙を選んでいる。抜きや折りの加工に適しているという製造上の理由もさることながら、決め手になったのはやはり見て触って感じるその質感だった。
「イタリア産の紙を日本の伝統様式と組み合わせてギャップを楽しむといったことも考えたのですが、一方で安心して使える祝儀袋にすることも大事。形を新しくしたぶん、素材感はトラディショナルにする。それが日本人としてしっくりくる落としどころだと思いました」と大友さん。
できあがった折水引はシャープな造形と柔らかな素材感を持ち、裏面に印刷した赤やピンクがほんのり透けるのが美しい。のしの位置に設けられた折り返しの穴から「寿」「祝」の文字が見えるのもしゃれている。
「紙は白いキャンバスと同じ。自由にアレンジできるし、新しいことに気軽にトライできる良さがあります。ただし、気軽さに甘えてアイデアを煮詰めないまま製品にしてしまうと、クオリティーの善し悪しがはっきり表れてしまう。振り回されないようにするには、紙の肉厚感や色合い、透け具合など、自分のイメージするものを明確にしてから向き合うことが重要です」
この折水引は販売を始めてまもなく1年を迎えるが、最も売れているのは結婚式などで使う「結び切り」の紅×白。大友さん自身、友人から結婚式のお祝いを包むのに使ったと言われたこともあったという。
一枚の紙も丁寧にデザインされれば、祝う気持ちを伝えるツールになる。受け取った人は、一風変わった水引の向こうに、贈り主の顔を微笑ましく思い浮かべるのではないだろうか。
ライター 石田 純子
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