親しい人を招いた食卓や行楽の食事は
場を盛り上げる楽しみの一つ。
その演出に役立つ和紙のテーブルウェアは、
「福を分け合おう」という発想のもとに作られた。
仲間が集まるホームパーティー、家族の誕生日の食卓、久しぶりに会う昔なじみを招くテーブル……それらは日常の中にある温かな時間といっていいだろう。
「お福わけのテーブル」は、まさにそんな場にうってつけのテーブルウェアのセットである。たとう紙のように折り畳まれたパッケージを開けると、中から紙製のランチョンマットやコースター、懐紙など計7アイテム、それぞれ5人前のセットが現れる。
素材はいずれも越前和紙で、布やビニール製のテーブルウェアでは見かけない、「箸さき入」「舞妓カード」「お福わけ袋」などがセットされているのが面白い。
例えば揉み紙を折って箸の先を包む「箸さき入」は、箸袋よりコンパクトでそのまま箸置きに使える。また、「舞妓カード」は舞妓が名刺として使っていた小ぶりな和紙をアレンジしたもの。ネームカードとしてテーブルに置けば、パーティーがぐっとグレードアップする。そして「お福わけ袋」は、お菓子などのおすそ分けに使える手貼りのしっかりとした紙袋で、パーティー料理を持ち帰るのに使えば、お客は帰った後も余韻を楽しむことができる。
この「お福わけのテーブル」は、越前和紙の産地、福井県越前市にある有限会社紙和匠(かみわしょう)が製造販売を行っている。同社が提案する「日常に気軽に取り入れられる和紙製品」の一つで、代表取締役の石川靖代さんが、「女性の暮らしに沿う雑貨」をテーマに企画した。
「企画段階では『おもてなしの卓』という名前で進めていたのですが、いろいろ考えるうちに、人をもてなすことは自分の喜びにもつながると思い至りました。そこでパーティーなどを通じて幸福を分かち合うという意味をこめ、商品名を『お福わけのテーブル』に変更したのです。もちろん、越前和紙を産する福井県の『福』の意味も兼ねています」(石川さん)
「もてなすことは自分の喜び」という考えがよく現れているのが、セットの中にあるコースターだ。よくある厚紙でできたコースターではなく、長方形の和紙を2つに折って使うものだが、折るという一手間をかける楽しさを知ってもらうため、あえてこの形状にしてあるという。
こうした発想には、石川さんの実体験が色濃く反映されている。地元で古くから和紙製造を営むという家柄のためか、15~16人のお客を招いて食事をふるまうことも珍しくないのだという。その準備が「面倒な作業」になるか「楽しい時間」になるかは、やり方次第。もてなす側も集まって世間話でもしながら進めれば、準備の手間もイベントの一部になる。
ちなみに、箸さき入の袋に押された落款風のスタンプは、石川さんの娘さんが消しゴムで手作りしたもの。思いがけず味わいのある仕上がりが得られたため、そのまま商品に一つ一つ手押ししているそうだ。
そんなエピソードからは、手作りという工程が、使う人だけでなく、作る人にも喜びをもたらしている様子がよくわかる。
「お福わけのテーブル」は今春から直販のほか百貨店やショップなどで販売を始めており、東北地方のショップからもいちはやく発注があったという。
身近な人同士の絆、そして何気ない日常のありがたさに目がいく今、紙が演出するちょっとした贅沢とささやかな幸福感、それらが静かに強く求められている。
ライター 石田 純子
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