いま、「婚姻届」が華やかだ。
役所に備え付けの用紙でなくても、決められた要件を満たせば受理されるため、
オリジナルデザインの婚姻届を選ぶ人が増えている。
最近ではプロポーズ用にも使われるという、婚姻届のあれこれをのぞいてみた。
「もっとかわいい婚姻届があればいいのに」
そもそもの発端は、結婚を控えたスタッフのそんな一言だった。それが、さまざまなデザインの婚姻届を購入・ダウンロードできるサービス「婚姻届製作所」立ち上げのきっかけになったという。
サービスの提供元は株式会社e’motion(エモーション/東京都新宿区)である。ランチのおしゃべりの中でふと飛び出した冒頭のスタッフの言葉を受けて、企画をスタート。正式な婚姻届として提出できる要件を調べ、それにかなう100種類ものデザインを起こして、商品化にこぎつけた。
2014年に「いい夫婦の日」にちなみ、11月22日にネット販売で売り出したところ、反響は上々で、今ではデザインパターンが240種類以上、購入とダウンロードを合わせ、月間約1万枚の利用がある。
コンスタントに売れているのは、花嫁と花婿をモチーフにしたパステルカラーの婚姻届。ほかにも風景や幾何学模様、キャラクターをあしらった婚姻届など、デザインパターンは多種多様だ。
なかでも人気が高いのは、新郎新婦の写真や名前が入るセミオーダータイプだそう。「世界に一つ」というオーダーならではの特別感が、支持される理由のようだ。
ちなみに同社の婚姻届は、提出用、書き損じに備えたスペア、保存用の用紙の計3枚をセットにしている。提出用はA3サイズだが、保存用は扱いやすいようにA4サイズで「2人が交際を始めた日」や「誓いの言葉」、「お互いの好きなところ」など、提出用にはない、2人の思い出に通じる記入欄がある。
「入籍したときの2人の気持ちを忘れずにいてほしいんです。結婚式と比べ、入籍は印象が薄くなりがちですが、こうした特別な婚姻届があれば2人の思い出にもなるし、記入に携わった友人も覚えていてくれるかもしれません。入籍という記念日がもっと大切な日になればいいですね」と話すのは、エモーションの広報を担当する藤井文香さんだ。
利用者のほうもアイデア豊富で、別売のアルバムに2人の写真入りの婚姻届をセットして式当日に展示したり、新居のリビングに飾ったりと、めいめいが楽しんで利用している様子がうかがえる。
また、入籍を届け出るという本来の使い方のほか、プロポーズ用のグッズとして使用されるケースも多いため、2015年からはプロポーズ用に使いやすく工夫した商品も売り出し、好評を博している。こちらは婚姻届と同じ記入欄のほか、自由な書式で綴ったラブレターを入れるためのミニ封筒を付けるなど、渡す側がその思いを余すところなく伝えられるような仕掛けを施している。
「以前、当社の婚姻届を利用された方々と電話でお話しする機会があったのですが、そこでお客様から『たった1枚の紙のお陰でとても幸せな気分になれた』という、とてもうれしい言葉をいただいたんですね。結婚は人生の節目ですから、私たちもそこで使う1枚の紙の重みをしっかりと理解しておかなければいけないと、改めて自覚しました」(藤井さん)
さらに2015年12月には、オリジナルデザインの出生届を扱うサイト「出生届製作所」のサービスも始め、同社ではライフイベントにまつわる届出書のオリジナル化に力を入れている。
本来は届け出用の必要事項も、紙にしたためれば思い出へと形を変える。人生の節目にわき上がる、喜びと決意の混じり合う強い気持ちを、紙がいつまでも思い出させてくれるだろう。
ライター 石田 純子
このコラムに掲載されている文章、画像の転用・複製はお断りしています。
なお、当ウェブサイト全体のご利用については、こちら をご覧ください。
OVOL LOOP記載の情報は、発表日現在の情報です。予告なしに変更される可能性もありますので、あらかじめご了承ください
日本紙パルプ商事 広報課 TEL 03-5548-4026