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【絵本は「こころを育てる本」】 ―― 紙の絵本が果たす情操教育の力

2026.03.30

日本紙パルプ商事は、紙の持つ価値と魅力を次世代へ伝えるべく、「出前教室の全国展開」や「定期ワークショップの開催」、「紙の研究会による継続的な探究活動」を通じて、紙文化の普及と理解促進に取り組むとともに、これらの活動を軸に、紙の存在感と可能性を社会へ広く発信すべく努めております。

紙の価値普及に向けた「紙の研究会」
「紙の研究会」では紙の良さをより多くの方に知っていただくため、「紙の価値」と「紙と地球環境」という二つのチームに分かれて活動をしています。これまで「紙の価値」チームは紙の役割や機能について考察してきましたが、現在は「紙の本」に注目し、その魅力や価値を整理・可視化し、広く発信する取り組みを進めています。
この活動には群馬大学 情報学部の柴田博仁教授をアドバイザーとして迎え、学術的な見地からサポートいただいています。
今回はその一環として、「絵本」がもたらす価値についてまとめましたので、ぜひお読みください。

なぜ今、絵本なのか

日本の紙の書籍市場はこの 10 年で 4~5 割縮小している一方、絵本市場に限ると、2013 年に 294 億円だったものが、2024 年には 368 億円と、堅調に成長を続けています。その背景には、いくつかの社会的な変化があります。
まず、コロナ禍をきっかけに家庭で過ごす時間が増え、親子で本を楽しむ習慣が見直されました。また、デジタル機器に囲まれた生活の中で、紙の本に触れる安心感や画面にはない温もりを求める声も高まっています。さらに、AI の使用やオンライン学習が増加する時代だからこそ、紙の本による、子どもの「こころ」を育てる情操教育の重要性が改めて注目されているのです。
本稿では、絵本の定義や歴史を振り返りながら、紙の絵本ならではの価値を改めて見つめ直し、なぜ今絵本が必要とされているのかを考えていきます。

絵本の定義:言葉と絵が織りなす、感じる「本」

絵本は、単に物語に絵を添えたものではありません。言葉と絵が一体となって語られることで、子どもにも物語の世界を感じさせるメディアです。幼少期の子どもは、言葉の理解が未熟でも、絵から意味や感情を読み取り、自然と物語に没入します。
絵本は、読むことだけにとどまらず、聞く・見る・感じるといった体験を通して、心に語りかけてくるものです。知識だけでなく、情緒や言語感覚の土台を育む最初の本。そして、その体験を最も豊かに子どもが享受することができるのが、紙の絵本なのです。

絵本の歴史:親から子へ受け継がれてきたこころの文化

絵本の起源は近世ヨーロッパの児童書にさかのぼりますが、その根本は口承文学や寓話にあります。物語を語り伝える文化は、親や大人が子どもに言葉をかけ、想像力を育む営みと深く結びついていました。日本においても、江戸時代の草双紙と呼ばれる「赤本」「黒本」など、庶民向けの絵入り本が登場し、読み聞かせの場面で広く楽しまれました。
19 世紀後半から 20 世紀にかけて、児童文学と挿絵文化の発展により、絵本は子どものための芸術として進化します。特に戦後の日本では、『いないいないばあ』『ぐりとぐら』『だるまちゃん』シリーズなど、親子で読み聞かせながら楽しめる名作が数多く生まれました。

これらの絵本は、鮮やかな色彩を再現する印刷技術、繰り返しめくっても丈夫な製本、幼児の手にもなじむ用紙といった紙にまつわる高い技術によって支えられてきました。こうして絵本は、出版物を超えて「親から子へ受け継がれるこころの 文化」として、世代を超えた情操教育の中心的役割を担ってきたのです。

マーブル紙表紙の本
*画像:(草双紙) 合巻 『児雷也豪傑譚』慶応 4 年-1868 年, 紙の博物館 提供

絵本のかたち:手でめくる「本」の物語体験

絵本は、その物理的なかたち自体が、子どもの体験を深く支えています。
左右にページをめくる動作、紙の質感、色彩の広がり、見開きの構図。これらは単なる情報伝達ではなく、五感を通して物語に入り込むための導線となります。さらに、絵本の読み聞かせは「ページをめくるリズム」と「声の抑揚」によって物語を一層立体的に体験させます。子どもは大人の声の温もりを感じながら、ページをめくる動作に合わせて物語の展開を想像することで、絵本の主人公になったような気持ちを味わう事ができます。こうした身体と心を同時に使う体験は、紙の絵本だからこそ得られる貴重なものです。

絵本と知育:ことば・考える力・想像力を育む

絵本は、知識や情報を与える教材ではありませんが、子どもの知育の基盤をつくる力を持っています。たとえば、
• 語彙力や表現力の獲得(言葉の発達)
• 絵と文の関係から因果関係を理解(論理的思考)
• 登場人物の気持ちを想像する(共感性・社会性)
といった非認知能力が絵本体験を通じて自然に育まれます。
さらに「読み聞かせ」という行為は、子どもが大人の声を通じて安心感を得ると同時に、登場人物の感情を声色や間によって感じ取る体験になります。これにより、子どもは登場人物の気持ちをより深く想像し、共感する力を養います。親子が一緒に物語を味わう過程で、「考える力」と「感じる力」が同時に育ち、情操教育において大きな効果をもたらすのです。

紙の絵本の効能:子どもと絵本の関係性を支えるもの

デジタル絵本が普及する今も、紙の絵本が選ばれ続ける理由があります。それは、紙の絵本が子どもと絵本の関係性を深く、温かく支えるからです。
• 繰り返し読む:子どもが自らお気に入りのページとページを容易に行き来することで、何度も読み込み、言葉と絵が記憶に定着する
• 物としての存在感:部屋に置かれ、子どもがいつでも自ら手を伸ばし自由に手に取ることができる自分の本、という所有していることへの充足感を育む
• 共有の場の創出:親子でひざの上に広げ読み聞かせをすることで、身体ごと物語に包まれる体験を得られ、愛着と信頼の絆を深める

紙の絵本は読むこと以上に、親子の関係性を育み、子どもの情緒形成に欠かせない役割を果たしているのです。

絵本は「こころの知育」の原点

絵本は、子どもの知的好奇心だけでなく、感情や人間関係の芽生えに深く関わる存在です。物語を通じて、子どもたちは「感じる」「考える」「想う」ことを学びます。
特に読み聞かせを通じて得られる安心感や親子の触れ合いは、子どもの情緒を安定させ、豊かな共感力を育む情操 教育の基盤となります。絵本に描かれた世界は子どもの想像力を羽ばたかせ、現実の体験をより意味深いものへと広げていきます。そしてその力こそが、学力や知識では測れない「こころの知育」の中心といえるものなのです。
特に紙の絵本は、子どもと大人、物語と現実、感情と知性をつなぐかけがえのない橋渡しをします。絵本に触れる時間に育まれる安心感・想像力・絆は、子どもが社会で生きていくための基礎を作り上げます。
この文化と体験を、次の世代へとしっかりと受け継いでいくこと。それは紙の絵本を読み継ぐことから始まります。

◆フィールドワーク【社外有識者とのコミュニケーション・インタビュー】
「絵本」についての活動を行っている NPO(非営利活動法人) ブックスタートの組織運営統括マネージャー・斉藤様、三上様と、子どもの本専門店メルヘンハウスの店主・三輪丈太郎様に、さまざまなお話を伺ってまいりました。

(1)NPO ブックスタート
0 歳児検診等の機会に、読み聞かせの「体験」と「絵本」をセットでプレゼントする自治体事業「ブックスタート」の理念を伝え、独立・中立的な立場から活動を推進する民間の非営利組織。2001年に事業を開始(英国発祥)。
NPOブックファーストを通して「ブックスタート事業」を実施している自治体数は1,128(2026年1月現在)。出版社、印刷会社、製紙会社、当社をはじめとする紙流通等45社が法人会員。(ウェブサイト)

<インタビュー>
Q. 絵本が担っている役割や、活動の中で大切にされていることは何でしょうか?
A. 絵本は、赤ちゃんに優しく語りかけ一緒に過ごす時間をごく自然に作り出すもので、赤ちゃんに「読む (read books)」ものではなく、「読み手と共に楽しむ (share books)」ものという考えを大切にしています。また、本は造形物であり、パタンと閉じて読み終わる。読んでもらう絵本を選ぶ時に、子どもが本棚から 探したり並べたりして選べることは、デジタルにはない紙の良さだと感じます。

Q. 絵本を受け取った親子からはどの様な反応があるのでしょうか?
A. 「わが子は絵本に興味がない、まだ早いと思っていたが、実際読み聞かせてみたら子どもが楽しそうに見ていて驚いた」といった声が聞かれたり、スタッフの「家事や育児で忙しくて大変ですよね」の声かけにそっけない態度だった方が、読み聞かせのあと熱心に質問したり興味を示したりするなどの反応が見られています。

Q. 運営上難しい点や課題はありますか?
A. 各自治体では、継続的な予算の獲得や、親子一組ずつに丁寧に読み聞かせをする体制づくりなどが課題になってい ます。また、活動の社会的認知度の低さも課題です。絵本の出版に関わる各社の皆様にも、活動をもっと知って頂きたいと思っています。

マーブル紙表紙の本
*写真提供 NPO ブックスタート

最後に、斉藤様と三上様より以下のメッセージを伺いました。
「ブックスタート事業は、share books のひとときを通じ親子のコミュニケーションを促進すると共に、保護者が地域との 繋がりを感じる機会をつくることで、育児で孤立せず、親と自治体をつなぐツールにもなっています。今後も事業を実施する自治体のサポートを通じ、子どもと本に関わる豊かな土壌を社会につくっていきたいと考えています。

(2)メルヘンハウス
1973 年に名古屋で開業した日本初の子どもの本専門店。2018 年に惜しまれながら閉店した後、三輪丈太郎さんが二代目店主として2021 年に再オープン。「子どもたちに良い本を!」という理念を継承しながら、絵本の販売に加え、ギャラリーでの読書イベントや講演会など、幅広い活動を展開。(ウェブサイト)

このたび、三輪店主に我々の活動にご理解とご協力を賜り、絵本の選書をお願いしました。
その後、選書していただいた絵本を紙の研究会のメンバーで読み、感想や考察をオンライン対談にて、三輪店主にお伝えしました。

【選書頂いた絵本 6 冊】
①読み聞かせにお薦めの絵本(年齢別に3 冊)
②紙でないと表現しにくい、紙ならではの絵本
③大人にも響く絵本
④ズバリ三輪店主お薦め!の絵本

「たいこどんどん」 著者:三浦太郎 発行:ブロンズ新社 選書基準:0~2才向け

たいこどんどん 表紙

●あらすじ (ブロンズ新社ウェブサイトより引用)
こころ弾む、音のパレード!思わず声に出したくなる つみあげうた絵本登場!
どんどん ぷっぷー ぴーひゃらぴーひゃら じゃーん。ページをめくるたびに、どんどん音がつらなって、力強い鼓動がひびいていく!圧巻の観音ページもおたのしみに。

<柴田教授、研究会メンバーからのコメント>
たいこの音から始まって、ページをめくるたびに音や仲間がどんどん増え、読み進めるうちに盛り上がり、子どもの好奇心をくすぐります。0~2 才児向けのコンパクトな版型、厚くてめくりやすい紙、シンプルで背景とのコントラストが際立つ絵に加え、子どもが敏感に反応する、破裂音や濁音など音の響きが楽しく再現されています。言葉が少なく助詞もないので、難しい読解は不要、親子で声をだして楽しむのにぴったりです。三輪店主から、0~2 才は「色・形・リズム・繰り返し」が強調されている絵本がお薦め、とアドバイスをいただきました。

「かぁかぁ もうもう」 著者:丹治匠 発行:こぐま社 選書基準:2~3才向け

かぁかぁ もうもう 表紙

●あらすじ (こぐま社ウェブサイトより引用)
「かぁ かぁ かぁ」「もう もう もう」と、それぞれ気持ちよく歌をうたっていたカラスと牛。ところが次第に声のトーンで張り合うケンカになってしまい、いつしかユーモラスな歌合戦に…。カラスと牛の 気持ちになって思わず一緒に歌いたくなる、楽しい絵本です。

<柴田教授、研究会メンバーからのコメント>
擬人化された動物の言い争いは友達関係そのものを表現しているようで、「ケンカの後はこうあるべき」というメッセージが自然に伝わります。読むスピードやページをめくるリズム、声のトーンなどのアレンジが自在にでき、絵本を能動的に扱う事で一層楽しさが増します。オノマトペが沢山使われていて、親子で掛け合いを楽しめるのもポイント。お母さんが感情を込めて読むと、子どもがケタケタ笑う姿が想像できます

「ぼくがここに」 詩:まど・みちお、絵:きたむらさとし 発行:理論社 選書基準:4~5才向け

ぼくがここに 表紙

●あらすじ (理論社ウェブサイトより引用)
なにかが、そこに「いる」。なにかが、そこに「ある」。ただそれだけのことが、どんなにかけがえのないことなのか……。
まど・みちおの代表作であるこの詩に向き合うことは、まるで「大きな謎解きのようだった」と画家は語る。
とてつもなく大きな、宇宙的なものに守られている……そんな安心感につつまれる絵本。没後 10 年を記念して刊行が続く「まど・みちおの絵本」シリーズの一冊。

<柴田教授、研究会メンバーからのコメント>
哲学的なストーリーにメンバー、一同唸りました。宇宙に浮かぶ地球の絵や、引きからズーム、再び引きへと広がる構図が、壮大な世界観と「唯一無二の自分」というテーマを強調しています。大人でも理解することは難しいかもしれません。でも子どもは素直な心 で感じ取れる部分があるはず。自己肯定感や「生きていることの尊さ」を自然に伝え、非認知能力を育むきっかけになります。何度も読み返すことで深く味わえ、親子で一緒に考える時間にお薦めです。解釈は読み手に委ねられてよい、絵本の可能性、奥深さを知った作品でした。柔らかな色使いと歌のような言葉が読む人の心に静かに響きます。

「やばっ!」」 著者:トミー・ウンゲラー、訳:アーサー・ビナード 発行:好学社 選書基準:大人に響く

やばっ! 表紙

●あらすじ (好学社ウェブサイトより引用)
草木はかれ、いきものはいなくなり荒れ果てた地球。人々は月に逃げ、ひとり残ったぼく。影にみちびかれ、危険をすり抜けながら、ぼくはどこへむかうのか。トミー・ウンゲラー最後の絵本。

<柴田教授、研究会メンバーからのコメント>
現代社会を反映したメッセージ性の強い一冊で、作者自身が孫を思って描かれたという作品です。絵はダークな色調で、災害や分断、戦争など現代の問題を連想させる重い雰囲気である一方、字体や色の工夫、異世界感のあるキャラクターなど、視覚的な面白さもあります。全体的に沈んだ印象で子どもには難しく感じるかもしれません。「困難な世界でどう生きるか」「弱いものを守ること」「自分にできることを考える」という深いテーマで、大人にも響く内容です。ハッピーエンドではなく、読後の余韻と問いが残る一冊です。本作品の作者はかの有名な「すてきな三にんぐみ」のトミー・ウンゲラーさんです。

「ちょうちょ ちょうちょ」 著者:きくちちき 発行:偕成社 選書基準:紙でないと表現できない

ちょうちょ ちょうちょ 表紙

●あらすじ (偕成社ウェブサイトより引用)
花から花へひらひらと舞うちょうちょは、身のまわりの生きものの中でも、特別に幼い子どもたちの興味をひきつける存在です。「ちょうちょ ちょうちょ どこから きたの?」「ちょうちょ ちょうちょ なにしているの?」素朴な問いかけにみちびかれて、ちょうちょの魅力を詩情ゆたかに描きます。
ブラチスラバ国際絵本原画展で2 度の受賞にかがやき、国際的にも注目されているきくちちきさんが、特色印刷の描き分け版で描く美しい絵本。

<柴田教授、研究会メンバーからのコメント>
ページごとに色彩がガラッと変わり、めくるたびに新しい世界が広がる絵本です。ちょうちょという身近な存在がテーマなので、読んだ後に実際にちょうちょを見かけると、この本を思い出すかもしれません。絵は輪郭のはっきりしないタッチやインキの滲み、かすれなど、紙ならではの質感を活かし、ちょうちょが舞う世界を表現していると感じました。版型が大きく、紙をめくって指で感触と風合いを楽しみ、目で色彩を楽しめることは子どもの色彩感覚や想像力を育むきっかけとなり、紙の本ならではの体験です。

「うみへやまへ」 著者:三浦太郎 発行:偕成社 選書基準:三輪店主おすすめ

うみへやまへ 表紙

●あらすじ (偕成社ウェブサイトより引用)
きょう ぼくは はじめて おとうさんの うまれた うみべのまちへ いきます。「ぼく」は家族で白い車に乗って出発します。牧場をこえて、田んぼの一本道を通り、街なかをすぎて、大きな橋をわたったら……灯台が見えてくる!
山沿いの家から海辺の町へむかう道中の風景を、美しい絵と日記ふうの文体でえがきます。
この絵本には、もうひとり主人公がいます。本をうしろから開くと、海辺にすむ「わたし」があかい車に乗って、母方の祖父母を山のふもとへ訪ねるお話になるのです。前からとうしろから、ふたつのお話が楽しめる絵本です。

<柴田教授、研究会メンバーからのコメント>
表表紙、裏表紙で一つの絵になっており、それぞれ「うみ」へと「やまへ」というタイトルが付けられているこの本は、前からも後ろからも読むことができ、2 つのストーリーが同じページで繰り広げられる不思議な絵本です。同じ風景でも、海の子、山の子という視点の違いで見え方が変わるのが面白く、物事にはいろいろな側面があることを自然に感じ取れます。絵はカラフルで旅のワクワク感が詰まっており、ページが変わるたびに景色が変わる楽しさがあります。この仕掛けにはやられた!(笑)という気持ちになりました。

【三輪店主とのオンライン対談を通じて】
絵本の魅力とは何か?そこには、きっと紙ならではの魅力があるはず——。そんな思いから、私たちは今回のテーマに取り組みました。
当初は、絵本が子どもの心にどのような影響を与えるのか、情操教育における絵本の役割を探ることを目的としていました。しかし、対談を通じて、絵本そのものを楽しむことが何よりも大切であり、親子が絵本を通じて触れ合う温かい時間を共有することに、非常に高い価値があることを学びました。
今回、メンバーで読書体験を行ったことで、絵本の細部に込められた作者のこだわりや意図を感じ取り、絵本への理解が一層深まりました。

三輪店主は、メルヘンハウスで「大人絵本夜会」と称した読書会を開催しており、「大人が楽しむ絵本」という視点はとても新鮮で、私たちに大きな刺激を与えてくれました。メンバーからは、「絵本にはアート的な価値があり、一日の終わりに癒されたり、前向きな気持ちになれたりする。これは大人の嗜好品とも言えるのではないか」といった意見も出ました。
私たち大人が絵本を深く理解することは、子どもにとっても、価値があるように思えます。自分のお気に入りの絵本について語れる大人が増えれば、これまでとは違った新しい会話が生まれるのではないでしょうか。

メルヘンハウスの三輪店主は、「良い絵本とはどんな絵本ですか?」という質問をよく受けるそうです。その問いに対して、店主は「余白のある絵本」と答えているとのことでした。私たちはこの「余白」という言葉を、絵本の世界に入り込み、想像力を存分に働かせ、心が満たされる——そんな意味合いで解釈しました。「余白」とは、何事も楽しむ上で大切な、深く味わいのある言葉だと感じました。

最後に、絵本の魅力について三輪店主に改めてお聞きしたところ、思いがけない答えが返ってきました。それは、「子どものころに読んでもらった絵本に、大人になってからまた出合える」ということです。
そして、絵本作家・田島征三さんの『しばてん』という絵本から、象徴的な一文をご紹介くださいました。

『ぼくがひそかに期待していることは、子どもたちが、その成長の過程で、あるいは青年になってからでも、絵本『しばてん』が、かれらの心の中で発酵して、「ふっ」と、「あの絵本の作者がいおうとしたことは、このことだったのか!」と、心に沈んでくれることです。』(作者あとがき より引用)

今後の取り組みについて

今回は絵本の魅力について探ってみました。リアルな紙の絵本を手に取り、ページをめくりながら「読む・感じる・伝える」という行為は、単なる娯楽ではなく、人間の根源的な営みを見つめ直すきっかけになるのではないでしょうか。絵本は、言葉と 絵が織りなす世界を通じて、私たちの記憶や感情に静かに寄り添い、時に深い洞察をもたらします。あなたの心に沈み、時間をかけて発酵し、ある日ふっと気づきをくれる――そんな一冊に出合うために、書店へ足を運んでみませんか?

現在、デジタル教科書が正式な教科書として認められる方向で制度整備が進んでいます。教育現場におけるデジタル化の影響は、効率性やアクセス性を高め、学びの可能性を広げる一方で、紙の本がもたらしてきた「集中力」「記憶への定着」「身体を使った学習体験」といった価値に改めて注目が集まっています。
テクノロジーの深化が止まらない今だからこそ、私たちは「人間らしい学び」とは何かを問い直す必要があると考えています。便利さだけでは測れない、学びの本質とは何か、未来の教育のあり方を考えるうえで欠かせない視点です。

次回は、教育におけるデジタル化の影響と、紙の本が持つ本質的な価値について、調査・考察を行う予定です。「学びの質」をどう守り、どう進化させるべきなのか――その答えを探ります。

*参考文献:
松本 猛 著 『絵本とは何か』 岩波書店(2025 年)
松居 直 著 『絵本は心のへその緒』 ブックスタート、日販アイ・ピー・エス(2018 年)
田島 征三 作 『しばてん』 偕成社(1971 年)
マガジンハウス 編 『Casa BRUTUS 特別編集 大人も読みたいこどもの本 200』マガジンハウス(2025 年)
柴田博仁、大村賢悟 著 『ペーパーレス時代の紙の価値を知る - 読み書きメディアの認知科学』 産業能率大学出版部 (2018 年)

【群馬大学 情報学部 柴田教授 ご寄稿】

親子の読み聞かせでのデジタル絵本の影響について比較実験が行われています。デジタル絵本よりも紙の絵本を使ったほうが、絵本の内容についての親子の発話が多くなるという結果が得られています。デジタル絵本でも発話は多いのですが、デバイスやアプリケーションの機能に関する発言が多く見られました。
さらには、別の実験では、タブレットの電子書籍を利用するよりも、紙の絵本を用いるほうが、親子の触れ合いや距離が近くなり、アイコンタクトも多くなることも知られています。
親子の読み聞かせでは、デジタル絵本よりも紙の絵本を用いるほうが、親子が絵本の内容に集中して、親密な関係を築くことができると言えるでしょう。

柴田教授

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なお、当ウェブサイト全体のご利用については、こちら をご覧ください。

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