米袋の口を閉じるのに使う極めて丈夫な幅広の紙製バンド。ここで紹介するインテリア用品のシリーズは、その紙製バンドでできている。あらゆる空間になじむナチュラルで端正な存在感は、「日本の製品を世界に届けたい」という熱い思いから生まれた。
紙製バンドを格子状に重ねて接着した素材は軽くて丈夫、ささくれや毛羽立ちもなく、肌がデリケートな人や小さな子供のいる家庭でも安心だ。また、米袋のひもとして使われていることからもわかるように、抜群の耐久性を持ち合わせている。
「バンドシー」はその紙製バンドを素材とするインテリアブランドである。バスケット、ティッシュケース、スマホスタンドなどをラインアップし、ナチュラルで上質感のあるアイテムは、ホテルから一人暮らしの部屋までさまざまな空間と相性がよい。

これらの製品を企画したのはバンドシー株式会社(岩手県奥州市)代表の井窪浩一朗さんである。コンサルタントとして紙製バンドの製造元から依頼を受け、「紙製バンドを米袋のひも以外の用途に展開できないか」という相談に応じて自ら製品開発に乗り出したことが、このブランドの誕生につながった。
紙製バンドは牛乳パックを再生した和紙を「こより」にして糊で接着し、幅広のバンドに加工するという手順で製造される。井窪さんは依頼を受けた直後から、その紙製バンドをお守りのように持ち歩いたという。
「紙製バンドで何ができるか知りたくて、熱湯で茹でたり、薬品をかけて素材の変化を調べたりと、いろいろ試しました。あるとき、ふと思いついて紙製バンドを重ねてスチームアイロンをかけてみたところ、製造時に使用した糊がしみ出て、紙製バンド同士がしっかりと接着されることがわかりました。それが突破口となり、商品化のアイデアが膨らんでいったのです」(井窪さん)
紙製バンドを格子状に重ねて接着したシートをインテリア用品に展開することを決め、その上で井窪さんが重視したのは「製品を世界市場に送り出せるレベルに育てること」だった。そのため立体物でも組み立て式にして、輸送時は平面にすることにこだわった。平面にすることで輸送コストが下がり、海外輸送のハードルが下がるからだ。
例えばバスケットなら、最初は平面のシート状で、利用者が側面にあるボタンを留めることで立体的な形になる。コンサルタントとして起業する前は商社や輸入家具の販売会社に勤務し、海外の製造現場を幾度となく訪れて手配をしてきた経験から、「輸送しやすさ」の重要性は熟知していた。
「世界で勝負したい」という強い思いの陰にあったのは2011年の東日本大震災だった。日本、とりわけ東北に「元気を取り戻してほしい」という井窪さんの思いは、事業そのものにも影響を及ぼした。事業拠点は横浜市にあったが、2015年に自社工房を岩手県奥州市に設置した。
その2年後にはバスケットを第1弾製品とする「バンドシー」シリーズを発売したが、材料調達も製造も国内で行い、大規模な工場で大量生産するのではなく、手作業で高品質な製品を作れるように治具(製品加工で材料の位置決めなどをする道具)も自ら考案した。


現在、バンドシーシリーズはセレクトショップや自社サイトで販売するほか、ホテルの備品として採用されるなど、販売も順調に推移している。2026年には、シリーズ製品のバスケットが世界三大デザイン賞の一つであるドイツの「iFデザインアワード」を受賞し、さらに受賞製品のうちトップ75となるゴールド賞を射止めるという喜ばしい出来事があった。
審査員による「紙の概念を覆した」「持続可能な日本独特のデザインアプローチがある」という評価は、「世界で勝負したい」という井窪さんの夢を、「紙だから世界で勝負できる」という現実へと塗り替えた。
「木やスチールは他にも扱いに長けた国がたくさんあります。しかし、日本製の紙は非常に品質が高い上に、日本文化を色濃く反映しながら世界市場で強い存在感を発揮できる素材。使い方次第でもっと良さが引き出せるのではないでしょうか」と、井窪さん。年々増加する海外からの問い合わせが、それを裏付けている。

ライター/石田 純子 著書に『デザイナー・編集者のための紙の見本帳』(エムディエヌコーポレーション)ほか
■ コラム「紙が塗り替える風景」のバックナンバーはこちらからご覧いただけます。
※「紙が塗り替える風景」は、紙にまつわる製品やサービスに焦点を当て、紙という素材が持つ魅力や価値、その可能性を探るコラムシリーズです。本コラムで紹介する製品・サービスは、当社で取り扱いのない場合がございます。あらかじめご了承ください。
※本コラムに掲載されている文章、画像の転用・複製はお断りしています。
※当ウェブサイト全体のご利用については、こちらをご覧ください。
※OVOL LOOP記載の情報は、発表日現在の情報です。
予告なしに変更される可能性もありますので、あらかじめご了承ください。