多発する災害への備えが習慣化する中、紙にも大切な役割があるのではないか。そう思わせるメモ帳がある。防災意識を高めながら普段の暮らしに安心をもたらすメモ帳は「フェーズフリー」の考え方に基づくという。日頃から便利に使え、いざというときに心強い仕様はどのようにして生まれたのだろう。
「フェーズフリー」という考え方が注目されている。これは日常と非常時を一続きととらえ、いずれにも対応できる仕組みを構築していこうというものだ。食品のローリングストックがその代表的な例だが、他のさまざまな分野でも取り入れられている。
その一つが、メモ帳の機能を吟味して、日常で便利に使えるものが非常時にも役立つように構成された「Tree's Wリングメモ」だ。
片手で持ちやすい小ぶりなサイズのリングメモは、裏表紙が厚紙でできており、立ったままでも書きやすい。本文用紙に設けられたチェックボックスは、ToDoリストとして活用可能。表紙上部の欄に緊急時の連絡先を書き込んで、リュックや鞄のポケットに入れておけば、非常時の備えになる。タイポグラフィが目を引くクールなデザインの中に、こうした非常時にも役立つ機能がさりげなく仕込まれているのが特徴だ。

このメモ帳を製造販売する日本ノート株式会社(東京都江東区)では、「自然な形で防災につながる製品を」との思いから、企画開発を進めたという。
「普段使っているメモが、もしものときにも役立つのが、私たちの目指した方向性です。防災専用のメモにすると、しまい込んで保管されたままになりがちなので、用途や購入層を幅広く設定し、日常でも実用性の高いメモとして開発することで、普段から持ち歩いていただけるようにすることが大切だと考えました」と、日本ノート 販売促進課に所属し、広報を担当する菊川めぐみさんは説明する。
この「普段づかい」にするための工夫も見逃せない。製品名の冠となっている「Tree's」は「ちょうどいい」をコンセプトとする幅広い層に向けた同社のスタンダードブランド。Wリングメモをそのブランドに組み入れることで、普段づかいにも適していることを明確に示した。
また、本文用紙には筆記具を問わずなめらかな書き心地を体感できる同社のオリジナル用紙を採用した。計画的に管理・育成された木(植林木)を主な原材料とする筆記用紙である。
「フェーズフリーを成立させる機能を盛り込みつつも、気軽に購入できる価格帯を維持することにこだわりましたが、用紙の書き心地は妥協しませんでした。使ったときの満足感は大切ですから」と、菊川さん。
普段から愛用している紙製品が災害への備えにもなるという点は、災害への恐怖心をやわらげ、前向きに非常事態に向き合う助けになるだろう。


「デジタル化が進んだ今でも、思いついたときにすぐ書け、一覧性が高く自由な発想を形にしやすいといった特長は、紙だからこそ実現できる部分があります。このWリングメモは、そうした紙の良さを活かしながら便利な価値を加えられないかという発想から生まれたものです。近年、防災への関心はますます高まっていますが、この製品を通じてフェーズフリーの考え方がより身近になれば嬉しく思います」(菊川さん)
災害等により、さまざまなインフラに制限がかかる中では、普段、当たり前に身の回りにある紙が、「あってよかった」と心から思える場面があるかもしれない。日常と非常時をシームレスにつなぐ便利さと豊かさの追求は、これからも私たちの大きなテーマとなっていくだろう。

ライター/石田 純子 著書に『デザイナー・編集者のための紙の見本帳』(エムディエヌコーポレーション)ほか
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