日本紙パルプ商事の「国際事業本部 紙化ビジネスグループ」は、プラスチックから紙素材への切り替え提案をメインとするビジネス開発を推進している。食品やアパレル、農業などの幅広い分野において、環境課題を抱える企業やユーザーに向け独創的な紙製品を発信する紙化ビジネスグループ。そのリーダーを務める熊木グループ長に、これまでの取り組みや成果、今後の展望について聞いた。

国際事業本部 紙化ビジネスグループ グループ長
部署のパーパスを「紙化」という一つの軸に絞る
「紙化ビジネスグループ」は2024年4月、サステナブルソリューショングループから改称した。グループ長の熊木はこの新しい名称をとても気に入っていると語る。「『紙化ビジネス』と表記された名刺一つで、初対面の方にも何を目指して活動している人間か、即座にご理解いただけるようになりました(熊木)」
「サステナブルソリューション」という表記は、守備範囲が広いため、脱プラスチック・減プラスチックに対して確固たる最適解を提示しにくくなってしまうという課題があった。そこで部署のパーパスを「紙化」という一つの軸に絞り、組織の名称を変更することで着地。「紙素材への転換により、脱プラ・減プラ提案およびコンサルティングを提供する」という紙化ビジネスグループのアイデンティティーが明確になり、さらなる発信力向上へとつながった。

ただし、変わったのは名称のみで、グループの活動そのものは何ら変わらないと熊木は語る。熊木はサステナブルソリューショングループ時代からさまざまな紙化アイデアに着目しており、紙自体を透明にする技術を用いた包装資材「紙エール」はその中の一つだった。窓枠にプラスチックやグラシン紙などの異素材を貼り合わせるという通常の加工工程がないため、効率化と減プラが叶うととともに、透明部分の形状の自由度も高い。「紙エールは、環境適性とデザイン性の両面において高いポテンシャルを持つ」と感じた熊木は、「紙エール デザインウインドウ」と銘打ち、主にアパレルや雑貨向けの新たな包装資材として、開発および提案を行った。
そのような中で「日本パッケージングコンテスト2024」に出品したところ、紙エール デザインウインドウは最高位に当たる「経済産業大臣賞/ジャパンスター賞」を受賞。同コンテストはその年における包装の優れた事例を表彰するもので、社内外において当グループのプレゼンスをさらに高めるきっかけとなった。


絶えず動きながら、時には走りながら考える
華々しい受賞の結果は紙化ビジネスグループの大きな転換点となったが、紙エール デザインウインドウの製品化は、越えなければならない多くの壁を乗り越えて実現したものだ。大きな障壁となったのは、透明窓の形状だった。「どのような形状にニーズがあるのか?」「どういったデザインなら再現できるのか?」「どのような加工技術と組み合わせることができるのか?」など、数々の疑問が浮上するたび、逐一検証を重ねた。
「こうすれば世の中に受け入れられるのではないか」と仮説を立て、結果を見てまた仮説を修正し、再び行動する。このように、常にトライ&エラーが伴うことから、熊木は紙化ビジネスグループを「開発営業」のチームと表現する。
「動きながら考えることで情報が集まり、ひいては潜在ニーズを見つけられる。絶えず動くことで、周囲の人間を巻き込む――そんな『攻めの営業』こそ、新たな価値が生み出せると信じています。時には壁に突き当たることもありますが、だからこそ、自分で立てた仮説が予測通りにターゲットや顧客に受け入れられた時、最もやりがいを感じます(熊木)」
オリジナリティーを打ち出すことが紙化ビジネスの収益化につながる
日本紙パルプ商事は2024年12月に「カミエコ®」の商標登録を完了した(右に「カミエコ®」シリーズの一部を掲載)。シリーズとして展開中のカミエコ® 製品は、オリジナリティーにあふれた提案が特徴だ。例えば、個包装用の環境配慮型包材を求める企業から注目を集める「カミエコ® アパレルパック」(写真右端)は、段ボール古紙100%の再生紙「エコピア」を表面基材に使用した包装資材である。この「エコピア」は、日本紙パルプ商事のグループ会社であるエコペーパーJPが製造しており、通常は通信販売の梱包用緩衝材に用いられる。段ボール古紙を100%使用したアパレル用包装資材は珍しく、日本紙パルプ商事グループならではの製品と言えるだろう。「このような『他社にはない、独自の環境負荷軽減アイデア』こそ、顧客に評価される」と熊木は力説する。
「どのコミュニケーションチャネルにおいても、ユニークな商材や独自性に富むアイデアに対して、ユーザーとなるお客様は興味を持ってアプローチしてくださいます。競合他社にはないオリジナリティーを打ち出して差別化を図ることこそが、紙化提案を実ビジネスへと発展させ収益化させることができる、私はそう感じています(熊木)」

競合他社との差別化の一環とも言えるが、紙化ビジネスグループは対外的な露出拡大により日本紙パルプ商事としてのプレゼンスを広く社会にアピールし、やがては紙の新たな需要開拓につなげることも視野に入れている。サービスサイト「Paper & Green」( www.paperandgreen.com/)を活用した潜在顧客の発掘に努めているほか、ユーザーとできる限り多くの接点を作るべく、さまざまな展示会に出展し、機会創出を図っている。

また、月刊誌『食品包装』2024年7月号には、熊木が執筆した食品パッケージの紙化提案に関する記事が掲載された。2025年に入ってからは、月刊誌『包装技術』2月号に当グループの猪鼻悠也課長代理が寄稿。「紙エール デザインウインドウ」開発に関する記事として掲載されており、紙化ビジネスグループとしての発信力を高めている。
こうした紙化ビジネスグループの動きに呼応するように、当グループの紙化提案に賛同し、協業するパートナーが社内外に増えている。それが、次のビジネスに向けた活力を生み出していく。「紙化ビジネスの開拓は少人数でできることではありません。多くの方々と共に力を合わせ、これからも積極的に新たな市場を開拓・創出していきたいと思います」と語る熊木。彼がリードする紙化ビジネスグループは、日本紙パルプ商事グループの企業理念に掲げられた「3C(Change・Challenge・Create)」を体現する存在となっている。
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[掲載日] 2025年5月2日