手元に置いておくと何かと便利な綿棒。
軸や包装がプラスチック製のものも多いなか、軸も包装も紙という、紙で構成することにこだわった製品が現れた。
レトロで温かみのある紙で綿棒を包装し、リサイクル性を高めた理由を開発担当者に聞いた。
国産の綿棒が初めて作られたのは1965(昭和40)年のこと。当時、綿棒の軸はつまようじを作る技術を応用した木製だったという。昭和50年代になると、安全性や生産性の高い紙軸やプラスチック軸の綿棒が作られるようになり、今はそれらが主流となっている。
木製軸による国産初の綿棒を製造した平和メディク株式会社(岐阜県高山市)は、現在、さまざまな種類の綿棒や衛生用品を製造している。そのひとつ、2019年12月に発売した「ぜんぶ紙リサイクルできる綿棒」は、紙軸の綿棒をマッチ箱型の紙パッケージに収めた製品で、綿棒の両端にコットンを使っているほかは、パッケージも含め、ほとんどが紙でできている。
とりわけ目を引くのは個包装タイプの製品で、1本1本が樹脂フィルムの代わりに半透明のグラシン紙で包まれていることだ。個包装に紙を採用したのは同社にとっても初めての試みだという。
「はじめは砂糖の小袋に使う紙を転用できないか検討したのですが、やはり中身が見えないと検品ができませんし、お客様にも綿棒であることが伝わらないのではないかという懸念がありました。そこで中身が透けて見えるグラシン紙で包装することにしたのです」と、平和メディク商品開発部でこの製品を担当した蓑谷章一さんは説明する。
粉薬の包装などにも使われるグラシン紙は、中身が判別できて衛生も保てるという点で、綿棒の包装に適している。この個包装には、より強度をもたせ、接着を確実に行うために、紙のリサイクルを妨げない範囲で樹脂フィルムを貼り合わせたものを使用した。綿棒の個包装に中身の見える紙を用いた製品はこれまでなかったため、その構成については現在特許出願中だ。
このようにして同社が「ぜんぶ紙リサイクルできる」ことにこだわったのは、2018年にプラスチック製ストローによる海洋汚染がクローズアップされたことが発端だ。脱プラスチックを目指す欧州の動向にならい、環境保全のためにできることとして、同社はさっそく同年12月より紙製ストローの製造販売を始めた。そこで確かな手応えを得たことが、主力製品の綿棒の新製品に紙を活用することへとつながった。
「紙はリサイクルできますし、土中に埋めれば分解される環境負荷の少ない素材です。一方で、プラスチックにしかできないこともありますから、紙もプラスチックも適切に使い、適した処理を行って、資源循環のサイクルにのせていくことが大切だと思います。そのなかで当社が『紙リサイクルできる』ことを強調した製品を出したのは、紙が誰にとっても身近で、環境への意識を高めることができるツールと位置づけているからです。今後も環境負荷の低減に役立つ素材として、紙を活用した製品を考えていきたいですね」と、蓑谷さん。
衛生用品のカテゴリーで、ここまで紙を多用した製品は珍しく、発売後は新規性のある取り組みとして産業界で話題を呼び、メディアでも紹介された。
身近な生活用品だからこそ、衛生的に、使いやすく、ごみは少なくしたい。そんな人々の多様な声に、紙は応えることができたようだ。
ライター 石田 純子
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