おにぎりと折り紙。
一見何の関係もなさそうな2つが結びつき、新しいツールが生み出された。
誰もが楽しめる紙の道具「オリニギリ」とは?
日本に暮らす限り、おにぎりはとても身近な存在である。具材に何を入れるか、形をどうするか、あれこれ考えながら作るのは楽しいものだ。
握るための道具も各種あるが、そのひとつ「オリニギリ」は、おにぎりを作るための厚紙のシートである。正方形の厚紙を折り線に沿って折り、いったん開いてからご飯をのせて包んで握ると、三角錐や富士山などのユニークな形のおにぎりができあがる。「オリニギリ」の名はもちろん「折り紙」と「おにぎり」に由来している。
このオリニギリを使っておにぎりを作る催しを、インドにある日本大使館で行ったところ、非常に好評だったという。一枚の平らな紙が立体に変わる新鮮さと、それを使って日本の日常食を作れることが、興味の的となったようだ。
「たとえ言葉が通じなくても、楽しみながら一緒に作って食べれば、他人との距離が縮まるものなんですね。交流のきっかけになるのを実感しました」と、オリニギリ考案者の一人、杉浦愛子さんはその様子を振り返る。
オリニギリを最初に思いついたのは新田知生さんだ。本業は建築家で、タワー型の建物を設計する際に、一枚の板状の部材に細かな折り目を入れて筒状にすることを考え、紙で模型を作り検討していた。そのとき偶然、一部が切り離されてしまったという。その切り離された紙片をもてあそぶうち、ふと、この紙でご飯を包めばおにぎりができると思いつき、友人同士の集まりで披露したのが発端となった。
オリニギリが初めて一般に公開されたのは、2015年に宮城県登米市で行われた東北風土マラソンだった。東日本大震災の復興支援の一環として制作したオリニギリを使い、地元の婦人会とともに2500個ものおにぎりを作った。おにぎりはマラソンの完走賞としてランナーに配布され、以来、毎年このマラソン大会に登場している。
その後、新田さんと杉浦さんはオリジナル柄のオリニギリの製造・販売を始め、オリニギリを使った親子向けのワークショップやイベントを開催するようになった。
オリニギリの魅力は多彩である。イベントやワークショップを盛り上げる一方で、一枚の紙に記された展開図と、そこから生み出されるおにぎりという立体の関係を学ぶ知育にも役立つ。また、形や具材を工夫して新しいおにぎりを創造する楽しさも味わえる。
「紙は自由ですよね。折ったり開いたりと試行錯誤を繰り返すうち、潜んでいたクリエイティビティが引き出される面白さがあります。オリニギリで遊びながら、自分だけのオリジナルの形を創造してほしいと思います」と杉浦さん。
最近では、オリニギリワークショップをニューヨークで定期開催するなど、海外への展開にも力を入れている。こうした試みに賛同して協力するメンバーも徐々に増え、今では新田さん、杉浦さんはじめ約100名の「オリニギリ隊員」がいるという。
「折り紙とおにぎり、2つの日本文化を下敷きにしながら交流を続けることで、平和的な活動につなげていけるんじゃないか。そんなふうに思っているんです」と新田さん。
新田さん、杉浦さんとも、「もともとは人見知りするほう」だというが、オリニギリのイベントのために国内はもとより海外まで出かけ、老若男女さまざまな人たちと触れ合う喜びを語る表情は、実にイキイキとしている。
おにぎり作りを通して他者との交流を深め、楽しさを分かち合うこと。ちょっとした緊張感と照れ臭さをともなうそんな場面を、一枚の紙がさりげなく助けている。
ライター 石田 純子
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