クリスマスが終わるとすぐにお正月がやってくるこの時期、家の中にも特別な演出をしてみたくなる。
そんなとき、モダンなインテリアにも似合う白い紙のリースはどうだろう。
ドアや壁に飾ればほどよい存在感を発揮し、家で過ごす時間を楽しませてくれそうだ。
ヒイラギやモミの木をモチーフにした白いクリスマスリースは、静かで穏やかな聖夜を連想させる。天然の木の枝でつくられるリースとは趣の異なる、端正な人工美がこのリースの特徴だ。
使われている素材は「ユポ」というポリプロピレンを主原料とする合成紙。ツヤがなくマットなのに滑らかな風合いが、リースの陰影の美しさを引き出している。
このリースをデザインした伊藤千織さんは、札幌に拠点を置くプロダクトデザイナーだ。
「雪に囲まれている時期が長いので、白はなじみ深い色。白い紙はたくさんありますが、ユポの白は純白でもなくアイボリーでもない独特な色合いで、 “温度を感じさせる白”なのがいいですね」と伊藤さん。
紙のリースを初めて制作したのは10年ほど前、クリスマスリースをテーマにしたグループ展に参加したとき。そこで非常に好評だったことから商品化を進め、「ペーパーリース」の名前で販売を始めた。
試作段階ではコースター用の厚紙を使ってみたが、折れやすく、仕上がりもしっくりこなかったため、手元にストックがあったユポを試してみたところ、思った以上の仕上がりになったという。
「ユポはとても丈夫で少々手荒に扱っても折れないし、曲げたときに強い反発が生じる性質が、このリースの造形に適しているんです。このリースは、まず円に沿った折り山をつくり、全体を丸く引き絞ると、紙の反発性によって葉っぱの部分が浮き上がるのを利用しているのですが、その反発性はユポならではのもの。いろいろ試す中でこういった使い方を発見しました」と伊藤さんは楽しげに語る。
その後もペーパーリースは、出品する見本市でバイヤーの注目を集め、パリの人気雑貨店やロンドンにある美術館のミュージアムショップで販売されたこともある。近年になって、宝船や松竹梅などの縁起物をモチーフにしたお正月向けのリースをデザインし、ラインナップに加えたところ、人気ブロガーの目に留まり、ブログで紹介されてから注文が急増した。
「もともと抽象的な造形を志向していたので、具体的なモチーフをたくさん入れ込んだお正月向けのリースを発表したときは、正直自信がありませんでした。ですが、反響があったことで、この世界観もアリなんだと思えるようになりましたね」と、伊藤さん。
素材としてのユポへの愛着は強く、造形や着色で何ができるか、どうすれば美しく見えるか、さまざまな試みを行ってきた。お正月向けのリースもその試行錯誤が活かされ、前面のユポの白い素材色はそのままに、下地の赤をのぞかせる構造により、ほどよい華やかさが加わった。
さかのぼって子供時代、通っていた小学校の校長先生の専門分野が美術であったことから造形教育が盛んで、校内では紙工作ブームが巻き起こったという。そこで伊藤さんも紙工作に熱中し、のちに美術大学に進学、さらには建築設計事務所勤務を経てデンマークへのデザイン留学も果たした。
帰国してからは主に家具などのデザインを手がけているが、ペーパーリースのような紙を使ったデザインも続けているのは、やはり小学生の頃の楽しい記憶が鮮明に残っているからだという。
小学生の頃に熱中した工作と、プロのデザイナーの仕事とが「紙」によって一直線に結ばれている。その事実に、紙という素材の奥深さを改めて思い知らされた。
※「ユポ」は株式会社ユポ・コーポレーションの登録商標です。
ライター 石田 純子
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