ボールペンやシャープペンシルといえば、誰もが頻繁に使用する身近な筆記用具。これらは樹脂や金属など、さまざまな素材で作られているが、近年になって紙でできたペンが登場した。
環境大国・ドイツでは広く利用されているというが、日本ではまだまだ珍しいこの「紙製のペン」について調べてみた。
ジャパン・プラス株式会社(東京都北区)では、「紙ペン」という商品名で、古紙を巻いて作る「紙管」を軸にしたボールペンとシャープペンシルを製造・販売している。取り扱いを始めたのは5年前から。その後、販売数は年々増加し、現在は平均して月に15~20万本を出荷している。
その魅力は、紙製の筆記用具という「目新しさ」、名入れやオリジナルプリントが可能な「デザイン性」、そしてなんといっても「エコロジー性」だろう。
軸部分が古紙をリサイクルした再生紙であるだけでなく、印刷には、油性インクより作業時の節水効果が高い水性インクを使い、さらに紙を留める糊にはガゼイン(牛乳由来の天然接着成分)を使用。ノック式ボールペンのノック部分とホルダー(いずれも右写真で黒くなっている部分)には、再生ABS樹脂(※注)を用いるという徹底ぶり。「製品全重量の70%以上が再生可能であること」という認定基準を満たした上で、現在エコマーク申請中だ。
こうした工夫により、「リサイクルできる」「製造時の環境負荷を軽減する」「廃棄を容易にする」といった商品特性が備わった。
紙軸の地色は古紙そのままの「クラフト」と、「ブルー」「レッド」「グリーン」の計4色を常時ストックしているが、やはり自然を連想させる「クラフト」が最も需要が多い。
用途は、企業や官公庁、自治体で製作・配布するノベルティなどが過半数を占める。コストは同タイプのプラスチック製品の約2倍と、決して安価とはいえない。それでも大量受注や、リピート受注する顧客も珍しくないという。
近年ではオリジナルプリントを施した店頭販売用の商品も伸びており、雑貨店などで販売されるほか、テーマパークのオリジナル製品や、ミュージシャンのコンサートグッズなどとしても人気を博している。
この「紙ペン」の魅力について、ジャパン・プラスで営業を担当する日高英司さんは、次のように語る。
「エコロジー性に優れていることが、この商品の最大のメリットですが、もう一つ、・紙のぬくもり・というのも大きな魅力ではないかと。紙管部分は使用に耐える硬さがありますが、やはり紙なので、表面がわずかに柔らかく、長く使い続けると自分の手になじんでくるんですね。そうした使用感の良さも、紙だからこその特徴です」
実際に手にしてみると、日高さんの言葉通り、あたりが柔らかいことと、その軽さに驚かされる。
世の中に送り出す製品がエコロジー性を満たしていることは大切だが、それだけで人々の支持を集めるのは現実には困難だ。紙製のペンがドイツですっかり定着したのも、「使用感の良さ」という要素があったからこそではないだろうか。
※ABS樹脂……繰り返し再生可能な樹脂。
ライター 石田 純子
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