ショッピングセンターやカーディーラーなどで
子供専用の遊び場が設置される店舗が増えている。
そうしたキッズコーナーで重視されるのは、楽しさと安全性だ。
そんな条件を満たす、カラフルな紙の大型家具が評判を呼んでいる。
「baby M.I.L.(ベイビーミル)」と名付けられた紙製の大型家具シリーズを制作しているのは、有限会社ツールボックス(東京都新宿区)。椅子や机はもちろん、システムキッチンや遊具、紙製の壁と床で構成された小さな子供部屋を、まるごと紙で制作することもある。
同社は企業のマーケティングサポートなどとともに、販促ツールの開発・制作を多数手がけてきた会社。この「baby M.I.L.」もそのツールの一つで、商業施設などを訪れた親子が、子供を安心して遊ばせる場所を確保した上で、商談やショッピングに集中できるように考案されたものだ。
素材に紙を使用したのは、樹脂や金属と比べて、製造時と廃棄時の環境負荷が格段に低いという理由が大きいが、結果的にはより自由なデザインと色づけが可能になり、ドールハウスのように明るくポップな子供専用の空間を演出するのに役立っている。
使われている紙は段ボールと同じ構造の厚手の紙。古紙パルプを原料にすると、どうしても強度が不足してしまうため、間伐材由来のバージンパルプからつくられた紙を使用している。
子供が使用する製品だけに、強度と安全性は気になるところ。製品を間近で見ると、紙の切断面はほとんどが内側に折り込まれていて、触れたときに手を切る心配はなさそうだ。またテーブルや椅子は、これまた紙でできた内側の補強構造によって、大の大人が上に乗ってもびくともしないほど丈夫にできている。
このようにして次々と作品をつくり出していく中で、新たに坂さんの心をとらえたのが、試作段階で発生するホワイトモデル(着彩する前の試作品)の美しさだった。それがデコレーションを排し、動きのしくみをそのまま見せるペーパークラフト作品の原型になったという。
「これまでの販促ツールづくりで培ってきたノウハウを生かしながら試作品をつくり、強度テストを行っては改良する。その繰り返しです」と、代表取締役の田代秀雄さんは説明する。
そうした努力の積み重ねが実を結び、今では大型商業施設やイベントなどでbaby M.I.L.が導入されるケースが急増している。とくに反応がいいのは、2、3歳の子供たちで、そのカラフルなセットを見るなり走り寄り、1時間、2時間と飽きることなく遊び続けるという。
「お子さんが勢いよく飛び乗ってももちろん大丈夫ですし、床に紙をタイル状にしたものを敷き詰めておくと、クッション性があるので転んでもあまり痛くないんです。中には『帰りたくない、ここで遊んでる』と言い出すお子さんもいたと聞きました」と田代さんは顔をほころばせる。
「素材に紙を使えば、間伐材の利用促進により森林が活性化するという効用のほか、ここ数年の価格高騰が著しい金属素材、樹脂素材と比較した際のコストメリットもあります。さらに導入した企業にとっては、環境に配慮した素材を利用して安全で快適な場を提供することにより、お子さんとご両親に企業姿勢をアピールすることができるのが最大のメリットではないでしょうか。
企業が『私たちは環境に配慮しています』という分厚いレポートをつくっても、それをお客様に読んでくださいというわけにはいかないでしょう? 店頭で楽しく企業姿勢を理解してもらうことができるなら、それがいちばんです」と田代さん。
よりよい社会のための提案を、身近な視点から表現できるのも、紙の持つソフトパワーと言えるだろう。
ライター 石田 純子
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