何気なく置かれたインテリア用品が、部屋の空気をきれいにしてくれる。
「光触媒」という技術を使い、
雑菌や有害物質を分解する作用を持つ紙のランプシェードがあるという。
竹軸に紙を張ったちょうちんのような形のランプシェードは、目新しさよりはむしろ懐かしさを感じさせる。シェードに用いられているのは、ほんのりと光の透ける薄い紙で、一見何のへんてつもない。しかしそこに最新の技術が隠されているといったら、驚くだろうか。
実はこのランプシェード、光触媒紙という特殊な加工を施した紙でできている。紙に抄き込まれた酸化チタンという鉱物が、自然光や人工灯の光に含まれる紫外線と反応して、空気中の雑菌や有害物質を分解し無害化するのである。
光触媒の主な効用は、ホルムアルデヒドの分解作用によるシックハウス症候群対策、雑菌の分解による消臭、防汚効果など。
紙に限らず、布や不織布、車や建物にも加工することができるが、紙の場合、紙自体に自然な呼吸作用があることが、光触媒の効果を引き出すのに役立っている。とくにランプシェードは、電灯の光が作用を促進するため、室内用品のなかでは高い効果を発揮する製品の一つに数えられる。また、効果の継続期間が数十年と長いのも特徴だ。
室内外の環境整備に役立つ製品の企画・販売を手がける、あいよコーポレーション(東京都江戸川区)は、ランプシェードをはじめとする光触媒製品を多数扱っている。同社代表の吉岡春樹さんによれば、個人住宅で光触媒のインテリア製品が利用されるのは、ペットのにおい消しやシックハウス症候群対策のほか、介護や小さな子供の育児のため、家庭内の衛生を目的にしているケースが多いという。
「もっとも光触媒製品は、今のところオフィスや店舗などの法人向け製品のほうが売れ行きが好調で、個人の方にはあまり知られていないのが実状です。最近のヒット商品は室内消臭に役立つ布製のアレンジメントフラワーや、衛生的で介護向きのタオルなどですが、他にも光触媒を取り入れることによって価値の高まる製品はいろいろあるはず。紙製品は生活に手軽に取り入れられるというメリットがあるので、今後はメーカーとの共同開発に力を入れ、個人のお客様に喜ばれるものを開拓したいですね」
そう吉岡さんが語るのも、室内製品を購入した顧客からの「使い始めて一週間でシックハウス症候群が軽くなった」「部屋のいやな匂いがなくなった」といった喜びの声あってのことなのだろう。
その吉岡さんに、現在あたためているアイデアを尋ねてみると「サンドイッチを包む紙やお弁当用の紙箱」という答えが返ってきた。
「光触媒紙には雑菌の繁殖を抑える効果があるので、中に詰めた食材が傷みにくい。今頃の季節にはうってつけです」
光触媒の応用範囲は実に広い。防汚を目的にルーブル美術館の一部外壁に加工されている事例もあれば、衛生や消臭を目的にタオルや靴下に加工されることもある。その中でも、紙のランプシェードやお弁当ケースは、日々使うものだけに、効果を実感しやすいに違いない。
光触媒という耳慣れないハイテク技術を気軽に体験できるのも、紙という身近な素材の面白さといえるだろう。
ライター 石田 純子
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