カラフルな紙テープを使い、貼り絵の要領で絵本を作り上げる
子供向けの知育教材が注目を浴びている。
ありそうでなかったその製品は、
どのようにして生まれたのだろうか。
2007年に発売された「てーぷでおえかき?」は、絵本とカラフルな6色のテープのセット。絵本のページを開き、未完成の絵にちぎったテープを好きなように貼り付け、自分だけの楽しい絵本を完成させるものだ。
これはニチバン株式会社(東京都文京区)から発売されている知育教材である。4歳以上の子供を対象に、遊びを通して創造性を養うことが意図されている。
製品の開発は、同社テープ事業部の涌井尚子さんが中心となり、監修の安見克夫氏(東京成徳短期大学教授/板橋富士見幼稚園園長)の協力のもと、子供の遊び方の実態を研究しつつ進められた。
ヒントになったのは大人の趣味として親しまれている「ちぎり絵」である。開発にあたって、実際に幼稚園や絵画教室を訪ねて子供たちの遊び方を観察したところ、幼稚園のひな祭りの飾り付けや絵画教室の作品に、紙をちぎって糊で貼って作るものが多数見受けられたことが、子供のための「ちぎり絵」の発展性の豊かさを裏付けた。
当初は風合いのある和紙をテープ状にし、ちぎって貼り付けるスタイルが考案されたが、和紙は繊維が長く丈夫なため、指先の力が弱い子供ではちぎりにくい場合がある。そこで強い力を入れなくてもちぎりやすい紙質に変更し、何度も貼り直しができる弱粘着性のテープを完成させた。
また、テープ単独ではなく絵本とセットにすることで、遊びの内容を提案するものにした。絵本の絵も、テープを貼る位置のヒントになるよう一部のページにグレーの誘導線を入れるなどし、好きなようにちぎれる紙のテープならではの自由さを損なわずに、遊びを促す工夫がされている。
完成した製品は子供の創造性と集中力を養い、また指先を動かす楽しさを体感できるもの。発売前のモニター調査では、我が子が遊ぶ様子を見た保護者から「飽きずに遊んでいたのが新鮮だった」「思いがけない色づかいを子供が思いついたことに驚いた」「もっと遊ばせたかった」といった感想が寄せられ、反響は上々。自信を持って市場に送り出せる製品になった。
発売後の「てーぷでおえかき?」は、ISOT(国際文具見本市)の2007年ステーショナリーオブザイヤーデザイン部門グランプリ、2007年のグッドデザイン賞を相次いで受賞。さらにテレビで紹介されたことから、急速に認知が広まった。
「NHKの番組で取り上げられたときは、100件近い問い合わせがありました」(涌井さん)という言葉が反響の大きさをうかがわせる。
身近な紙テープという素材を通して、「つくる」楽しさを実感できること、そしてどんな絵にするか親子が語り合いながら完成させる面白さが、人々の理解と共感を得たのだろう。
ライター 石田 純子
このコラムに掲載されている文章、画像の転用・複製はお断りしています。
なお、当ウェブサイト全体のご利用については、こちら をご覧ください。
OVOL LOOP記載の情報は、発表日現在の情報です。予告なしに変更される可能性もありますので、あらかじめご了承ください
日本紙パルプ商事 広報課 TEL 03-5548-4026