大人の趣味としてすっかり定着し、ますます人気の絵手紙。
その絵手紙を旅先でしたためるのにぴったりな
小ぶりのパレットと絵の具のセットがある。
持ち歩きにちょうどいいこのパレットは、なんと紙でできていた。
紙で作られたハガキ大のパレットは、二枚貝のように二つ折りにしたときにぴたりと合わさる形をしている。くぼみの部分もなめらかに成形されていて、てかりの強い樹脂製品とは異なる上品な光沢と柔らかな質感が、目にも手にも優しい。
これは「紙の絵手紙パレット」といい、紙管の柄にコットンの穂先をつけた筆と、12色の顔彩(水彩絵の具の一種)があらかじめセットされているもの。名前通り、これさえあれば絵手紙を書く準備が整う。
この「紙の絵手紙パレット」を製造販売しているのは、株式会社鈴木松風堂(京都市中京区)である。多彩な紙製品を扱っており、紙に熱をかけてプレス加工し、立体的な容器などを作る技術を得意としている。
このパレットも平らな紙をプレス成形して製作したもの。初めは同社の2005年用の年賀状として作り、方々へ送ったところ、評判がよかったため商品化に踏み切った。年賀状用に設定したパレットの大きさが、結果的に持ち歩きにちょうどよいサイズになった。
商品化の過程で焦点となったのは「吸水による成形部分の型くずれをどう防ぐか」という点。原紙は防水加工されているものの、紙本来の手触りを生かすためにビニールコーティングなどはしていない。そこでプレス機の圧力や熱のかけ方を何度も変えてテストを行い、絵の具の水溶きにも十分耐える硬さを成形部分に持たせることに成功した。
「紙製でも使い捨てにするのではなく、繰り返し使ってほしいのです」と、同社新規事業部部長の長阪光治さんは語る。
商品化の過程で焦点となったのは「吸水による成形部分の型くずれをどう防ぐか」という点。原紙は防水加工されているものの、紙本来の手触りを生かすためにビニールコーティングなどはしていない。そこでプレス機の圧力や熱のかけ方を何度も変えてテストを行い、絵の具の水溶きにも十分耐える硬さを成形部分に持たせることに成功した。
「紙製でも使い捨てにするのではなく、繰り返し使ってほしいのです」と、同社新規事業部部長の長阪光治さんは語る。
何度か使える丈夫さ、必要な道具がコンパクトにまとまった便利さとともに、この商品の魅力になっているのが「手軽でも本格派」というコンセプトだ。セットされた顔彩は渋いカラーバリエーションで、それが大人の絵心をそそる。この顔彩という絵の具は塗り跡がムラになりやすいが、ムラが素朴な味わいを醸し出し、初心者が描いても情緒豊かな絵に仕上がる。
そのためかこの商品は、絵をたしなむ個人だけでなく、会社が顧客に贈るノベルティ用として発注されることも少なくない。
過去にはニューヨーク近代美術館(MoMA)のミュージアムショップで販売されていたこともあり、そこで「紙の絵手紙パレット」を見た事業者が個人輸入でもしているのか、ニューヨークからも定期的にまとまった数の発注があるそうだ。
「お客様がこのセットに目をとめてくださるのは、パレットも筆もすべて紙でできているという商品自体の面白さ、そしてより自然に近い素材が好まれる最近の世相、この二つが大きいのではないでしょうか。それはたぶん日本も米国も同じなのでしょうね」
手のひらにのる軽く小さなパレットも、そこから広がるイマジネーションは限りない。イメージがふくらんできたら、紙を前にして筆をとってみよう。そうすればそこに新しい世界が開けていくはずだ。
ライター 石田 純子
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