和紙で作られた丈夫なこよりは、い草同様、畳状に編み上げることができる。
そうして作られた和紙畳は、肌触りのよいマット類のほか、
鞄に加工することも可能だ。
この珍しい和紙の畳、そして和紙畳の鞄とはいったいどんなものなのだろう。
一見すると目の細かな畳に見えるそれは、手にしてみると軽く、肌触りが柔らかなのに気づかされる。和紙でできた畳の個性は、見ためよりも手触りにより強く表れるようだ。
伊予和紙の産地として知られる愛媛県西部に位置する株式会社モリオトでは、和紙をこよりにして畳のように編んで作る「和紙畳」を1998年から生産してきた。
はじめは五月人形や雛人形の台座用として製造していたところ、湿気やカビに強く長持ちするという理由で利用が拡大。2001年からは肌触りの良さに着目して乳幼児用の和紙畳マットを製品化し、ヒット商品となった。
「和紙はもともと周囲の湿度に合わせて水分を吸収したり放出したりする吸放湿性に優れていますが、当社では特許技術を利用して、和紙畳用のこよりを芯が空洞のストロー状に加工しているんです。そのため出来上がった和紙畳は、吸放湿性はもちろん、弾力性に富んだものになります。それが肌触りがよく、長持ちする理由なんですね」と、同社でマネージャーを務める森實大輔さんは語る。
今年からは新たな試みとして、「フォレストトーン」のブランド名で和紙畳製の鞄のシリーズを発売。こちらは革と和紙畳を組み合わせ、一点一点職人が手作りしている。色あせに強い着色剤を使用するほか、樹脂コーティングで防汚・撥水加工を施し、愛着をもって長く使える仕様にこだわった。
気になる強度も心配いらないと森實さんは言う。
「和紙はもともと縦目のひっぱりに強いんです。それを6~7枚重ねてこよりにして編むので、カッターを当てても切れないほど丈夫です。しかしそれだけに、鞄のような形状に加工するのは容易ではなかったですね」と森實さんは苦笑いする。
「何社もの加工会社を訪ねては断られ、最後には凝ったデザインの鞄や革ジャケットのオーダーメイドに対応している経験豊富な職人さんにお願いして、やっと引き受けていただきました」
熱意の積み重ねによって世に送り出されたフォレストトーンのシリーズは、まもなく財布や名刺入れといった小物もラインナップに加わるという。人形の台座のような装飾品からマットのような実用品、フォレストトーンシリーズのような雑貨類など、和紙畳の応用範囲は幅広い。現在、モリオトで各種用途の和紙畳を月間100トンのペースで生産していると聞けば、その市場規模の大きさが想像できるだろう。
「来年か再来年には、ドイツのアンビエンテ(フランクフルトで開かれる大規模な消費財見本市)に、フォレストトーンシリーズを出展したい」と、森實さんは抱負を語る。
畳と和紙の日本らしさあふれる組み合わせ、そして丈夫で長持ちするという特性は、国際市場においても強くアピールするのではないだろうか。
ライター 石田 純子
このコラムに掲載されている文章、画像の転用・複製はお断りしています。
なお、当ウェブサイト全体のご利用については、こちら をご覧ください。
OVOL LOOP記載の情報は、発表日現在の情報です。予告なしに変更される可能性もありますので、あらかじめご了承ください
日本紙パルプ商事 広報課 TEL 03-5548-4026