会議などで使うホワイトボードの便利さは
誰もがよく知るところだろう。
それと同じようにマーカーで何度でも書いて消せる紙が現れ
話題を呼んでいる。
「消せる紙(けせるし)」の製品名を持つこの紙は、ホワイトボード用のマーカーとイレーザーを使って自由に書き、消すことができる。ホワイトボードと同じ機能が、つるりとした表面を持つ一枚の薄い紙の上で再現されるのは、なんとも不思議な感覚だ。
紙であるがゆえに、ハサミで好きな形にカットしたり、壁にマグネットなどで貼って使用し、使い終わったら別室に運んで再度使うこともできる。使わないときは丸めて保管してもいい。使い方はアイデア次第といったところだろうか。
この消せる紙を製造・販売しているのは、欧文印刷株式会社(東京都文京区)である。社名からもわかる通り、印刷会社だ。実はこの消せる紙、紙自体は特殊なものではない。コート紙というありふれた紙をベースに、表面に独自開発した印刷用のニスを塗布して製造している。印刷用のニスは汚れ防止などの目的で本の表紙などに広く使われるが、もちろん既存のニスを引いただけでは、書きにくかったり、消そうとしてもマーカーの粒子が残ったりして、書いて消せる紙にはならない。
それを同社が専用のニスを開発することによって、「消せる紙」を完成させたのである。
2008年10月の発売以来、「消せる紙」は雑誌や文具紹介の人気サイトで取り上げられるなど話題にのぼり、はじめはホワイトだけだったラインナップにブラックも加わった。
「ブラックは秋の学園祭シーズンに売り上げが一気に伸びました。好きな形にカットして展示や模擬店の表示に使え、簡単に書き直しができるのが、受け入れられた理由でしょう」(同社e-printingマーケティング部門長・下釜勝明さん)
最近では産学協同プロジェクトによって、日本大学芸術学部で工業デザインを専攻する学生から「消せる紙」を応用した新製品のアイデアを募り、製品化に向けて検討を重ねている。
「デザインも機能も新しいものを付加して、『消せる紙』をベースにした製品展開をどんどん行っていきたい。この春には新作もいくつか発表できると思います」と、下釜さんは意欲を見せる。
すでに「消せる紙」の技術を応用した知育絵本や筆談用具などが制作され、ノベルティなどとして好評を博しているという。
同社のような印刷会社は一般に企業間取引を中心とした受注型の事業が主で、消費者向けの製品を自社販売することは極めて少ない。しかしこの「消せる紙」は、DIY店やネット通販などで誰でも購入することができる。
「他社とは違う印刷技術、設備、アイデアなどの特徴を、製品を通してアピールしたかった」(下釜さん)という理由で始めたことだが、売れ行きは予想以上に好調だという。
「消費者向け製品は面白いですね。製品への反応がダイレクトに伝わってくるのが、新鮮です」(同社企画制作部門長・汲田丈二さん)と、プロのアンテナを刺激する要素も、この事業にはあるようだ。
紙を日常的に扱い続けてきた企業が、紙の別な側面に改めて目を向けたことが、予想以上の手応えを生んだ。活路を求める受注型企業にとって、励みになる事例と言えるだろう。
ライター 石田 純子
このコラムに掲載されている文章、画像の転用・複製はお断りしています。
なお、当ウェブサイト全体のご利用については、こちら をご覧ください。
OVOL LOOP記載の情報は、発表日現在の情報です。予告なしに変更される可能性もありますので、あらかじめご了承ください
日本紙パルプ商事 広報課 TEL 03-5548-4026