秋の夜長をあたたかく演出するあかり。
シェード部分が紙でできた照明はよく見かけるが、
支柱もシェードもすべて紙製、
しかもテーブルランプにもペンダントライトにも使えるという
ユニークなあかりが現れた。
幾重にも重なる羽根のようなシェード。そこからもれる光が美しい「ハニカムランプ」は、光源以外の構造体がすべて「でんぐり紙」と呼ばれる形状に加工した紙でできている。でんぐり紙とは、薄い透明感のある紙を何枚も重ねてその一部を互い違いに接着し、広げるとハニカム(蜂の巣状)構造になるもの。七夕飾りやクス玉の材料として、主に四国で作られている。
組み立てる前のハニカムランプは、畳んだままのでんぐり紙を、ランプの縦半分の断面の形に切り抜いてある。厚さはわずか2センチほどだが、それをぐるりとまわし広げて両端を付属のクリップで留めると、立体的なランプの形になる。
デザインした共栄design(静岡県清水区)の岡本光市さんは、以前からでんぐり紙に興味を持っていたという。初めは照明器具の一部だけにでんぐり紙を使い、飛び出す絵本のようにシェードをめくれば形状が変わる照明器具を構想していたが、アイデアを練り上げるうち、でんぐり紙の面白さを生かしたシンプルな形に行き着いた。
「パソコン上の設計図だけでは光のもれ方がわからないので、実際にでんぐり紙で試作品を作って光源を灯し、カッターとやすりを使って紙を削りながら、イメージ通りになるまで形を整えていきました。その後もう一度畳んで断面図のラインを製図し、抜き型を作って製造しています」と岡本さん。
仕上がりイメージへのこだわりは、ランプの形だけでなく、紙そのものの質感や色合いにも及んでいる。
「既存のでんぐり紙は一枚一枚が非常に薄く、重ねる枚数も25~50枚くらいなんです。それをやや厚手の紙にして、枚数も240枚と大幅に増やしました。360度広げたときのシルエットを滑らかにするには、枚数が多い方がいいですから。また、ランプの色は白と赤があるのですが、赤の方は紙に紅を練り込むなどして、深みのある落ち着いた赤になるよう調整しました」
こうしてできあがったハニカムランプは、テーブルランプだけでなく、逆さにしてペンダントライトとしても使えるユニークな形だ。インテリアに華やぎを添えるあかりとして人気が高まり、国内はもとよりドイツ、フランス、ブラジルなど海外でも販売されている。
「ハニカムランプを作る前にもいくつか照明器具をデザインしていて、紙を使ったものもあるのですが、いずれも海外での反響が大きいんですね。紙で作られているということ自体にジャパニーズ・デザインを感じてもらえるようなんです。また、これは製品を実際に海外出荷するようになってから気づいたことですが、紙でできていると折りたためるのでコンパクトになるし、緩衝材も必要ありません。だから輸送コストが少なくて済む。それも輸出しやすくなっている理由の一つなのでしょうね」
日本らしさの表現と流通上のメリット。紙を使ってそれらをかなえたことが、ユニークなデザインのランプを広く知らしめるのに役立ったようだ。
ライター 石田 純子
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