ものを包む素材にはさまざまな種類がある。
包装紙や化粧箱、風呂敷など、意匠に工夫を凝らしたものも多い。
そこに、包みを開けた後も何度でも使いたくなるような
魅力ある新素材が現れた。
木目がうっすらと表れた袋型のパッケージ。薄い板を折り曲げて作られたようにも見えるが、柔らかみのある上品な風合いは、今までにない新しさを感じさせる。
これは「プリントウッド」といい、有限会社北幸加工(北海道旭川市)が開発したものだ。絵柄を印刷した紙の上に、突き板(つきいた)と呼ばれる厚さ0.15ミリのごく薄い板を貼り合わせている。貼り合わせた後に再度印刷すれば、突き板から透けるほんのりした柄と、突き板の上に直接プリントされたくっきりとした柄が重なり合って、奥行きのある絵柄になる。
北幸加工では以前から製材や木材の加工品製造を行っており、製材の過程で生じる突き板や、節のある板など商品化が難しい端材の活用法を模索していた。そこで行き着いたのがプリントウッドのアイデアだったという。
「突き板と紙を貼り合わせて使うのは以前から行われていました。しかし突き板の『透ける』という特性を生かせば、もっと魅力的な素材ができるのではないかと思ったのです」と言うのは大坪輝史さん。
大坪さんは家業である北幸加工の取締役を務める傍ら、東京で空間デザイナーの仕事をしている。身近には紙媒体を扱うグラフィックデザイナーの知人がいて、その仕事ぶりを目にすることも多い。
その思いが、絵柄を印刷した紙に突き板を貼り、透ける模様と本物の木ならではの手触り感を楽しむという新しい価値を生んだ。もっとも、木を紙と貼り合わせることで可能になったのは、表面の美観を増すことだけではない。
突き板はもともと折り加工が難しく、木目に沿って折ると亀裂が入り、木目と直角に折ると折り口がギザギザになってしまう。
ところが突き板に紙を貼り合わせると、折り目が割れることなく滑らかに仕上がるので、さまざまな形状に加工できる。そのためパッケージなどの素材に向いているという。
「突き板は3センチ厚の板から200枚取れます。そう考えると、突き板を使用したプリントウッドは、木箱などに比べて木を有効活用できる素材でもあります。旭川市は木工製品が地場産業ですが、最近海外製品に押され気味なので、市内の事業者同士が協業して、旭川産の製品を今後も送り出していきたいと思っています。プリントウッドもそこで役立てたい」と大坪さん。
新しい装いの陰には、長い年月をかけて培われた木工の技術と木への愛着がある。その木に寄り添う紙の存在が、地場産業に新たな展開をもたらしてくれるのではないだろうか。
ライター 石田 純子
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