店頭に並ぶ付箋紙のバリエーションが広がっている。
機能を極めたものからファンシーテイストのものまで、
さまざまな機能とデザインが目白押しだ。
その中からユーモラスで、使って納得の付箋を取り上げてみた。
「なぜ机の上に豆腐が!?」
そう思わずにはいられないこの品物、「豆腐一丁」と書かれたふたのフィルムをはがして中身を取り出すと、ようやくそれが白いブロック型の糊付き付箋紙であるとわかる。取り出してもなお、色といい形といい、本物の豆腐にそっくりだ。
企画製造を行った株式会社ジオ(東京都多摩市)代表取締役の扇谷諭さんによれば、この「豆腐一丁」は「まったくの偶然のたまもの」として生まれたのだという。 はじめに意図していたのは「大判でたっぷり使える付箋紙」だった。そこで試作品を作ってみたところ、見た目から「なんだか豆腐みたいだね」という声が社内で上がり、「ならばいっそ豆腐のようにパック詰めにしてみたらどうか」と、思いついたという。パック詰めのアイデアは、分厚い付箋の小口を汚れから守るのにも好都合とあって、そのまま完成へとこぎつけた。
できあがった「豆腐一丁」シリーズには、「絹ごし」「もめん」「たまごとうふ」「ごまとうふ」のラインアップがある。これは紙のテクスチャや色合いを示すもので、「絹ごし」はなめらかな書き味、「もめん」はざっくりとした書き味、「たまごとうふ」は淡い黄色、「ごまとうふ」は温かみのある灰色の紙を用いている。最近ではツイッターをヒントに140字分のマス目を入れた「つぶやき」など、新たなバリエーションも追加されている。
2010年7月に発売し、今までにシリーズ累計10万個を売り上げたが、「こんなに売れるとは思わなかった」と扇谷さんは笑顔を見せる。なかでもよく売れている「もめん」タイプは、ざらついたテクスチャの用紙を使っており、筆記はもちろんスケッチに利用しても、その独特の書き味が堪能できる。鉛筆のノリがよく、筆圧をかけなくてもくっきり書けるので、スラスラと気持ちよくメモできるのが特徴だ。
聞けば、この製品のために専用の紙を作っているのだという。微細なエンボスのある金属の版を使ってシート状の原紙に圧をかけ、もめん豆腐を連想させるざっくりとしたテクスチャに仕上げている。
納得のいくテクスチャになるまで「金属版と原紙の種類を変えて、何十通りという組み合わせを試しました」(扇谷さん)というから、そのこだわりは相当なもの。
そのためか、発売当初はバラエティショップでの取り扱いが主だったが、最近では高級文具を扱う店にも置かれるようになってきた。苦労して生み出した紙のテクスチャが、「心地よく書け、使い続けたい書き味」として利用者に認められてきたことの表れではないだろうか。
「初めは豆腐を模したパロディ商品としてスタートしましたが、今後は書き心地のよい付箋やノートのシリーズとして長く使っていただける商品であることをアピールしていきたい」と扇谷さん。
その言葉を裏付けるように、今年5月からは「もめん」と同じ紙を中紙に使用した「豆腐ノート」も商品化し、3サイズ展開で販売を開始した。その白い表紙には、爽やかな水色で「しあわせな気持ちになれる書きごこち」とある。
日常のなかのささやかな幸福感と、それを生み出すために人知れず汗を流した誰かの思い。
一枚の紙にはそんなストーリーが潜んでいる。
ライター 石田 純子
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