バナナの茎には思いのほか丈夫な繊維が含まれているという。
その繊維を古紙と混ぜて漉き上げた紙は
ナチュラルな風合いとハリのある質感が備わっている。
そんなバナナ由来の紙を使った、楽しいメモ用紙兼ペーパークラフトが登場した。
楽しい絵柄の入ったメモ用紙を、くるっと丸めて両端の切り込みを組み合わせる。すると、たちまち立体的なペーパークラフトができ上がる。「ku・ru・ru」はそんな製品だ。現在50種類ものバリエーションがあり、その中に「バナナペーパー」という紙を使ったシリーズがある。
バナナペーパーはアフリカのザンビアで栽培されるバナナの茎を原料にした紙。その紙から作られた「ku・ru・ru」は、ライオンやキリン、バオバブの樹など、現地に生息する動物や樹木をリアルに再現し、小さいながらも野生の生命力を感じさせる姿に仕上がっている。
「バナナから作られた紙は、荒々しい質感と落ち着いた色合いが特徴で、そこに印刷する動物の絵柄とマッチして使いやすいんです。それにとても丈夫で破れにくく、ペーパークラフトの用紙にうってつけでした」と語るのは、この「ku・ru・ru」の企画製造販売を行っているペーパリー株式会社(東京都新宿区)の代表取締役、吉澤光彦さんだ。
同社がバナナペーパーの製品を企画し、販売するようになったのは2012年から。ザンビアの自立支援や環境保全を行う企業、株式会社ワンプラネットカフェ(東京都港区)との出会いがきっかけだった。そのワンプラネットカフェの社長で、バナナペーパー製造の事業化に尽力してきたエクベリ聡子さんは次のように語る。
「ザンビアは大自然に囲まれた平和な国ですが、一方で深刻な貧困問題を抱えています。電気も通っていない地域で、環境と社会に配慮した経済発展のために何ができるか試行錯誤していたときに耳にしたのが、バナナの茎から紙が作れるという話でした」
調べてみると、通常は収穫後に廃棄されるバナナの茎が、紙の原料として使えることがわかった。古紙と混ぜて漉くことで、印刷機にもかけられる紙ができ上がる。ならばそれを事業化すれば、現地の雇用が生み出せるのではないか。そう考えて製造方法や販売先の開拓など、紙づくりとその商用化への道をひらいてきた。
もっとも、ザンビアで紙漉きが行えるわけではない。現地ではバナナを刈り取った後に茎から繊維を取り出して乾燥させ、梱包してから日本に輸送する。送り先は福井県の製紙会社。そこで越前和紙の技術を応用して漉き上げる。でき上がったバナナペーパーは「ku・ru・ru」のような製品に加工され、買い手がつけば経済活動として定着していく。
こうした取り組みによりザンビアでは新たな雇用が生まれ、最近この仕事の人材募集を行ったところ、300人もの応募があったという。
「Made with Japanというキーワードに注目してほしい」とエクベリさんは言う。「日本製品の良さは『Made in Japan』として世界的に知られていますが、それだけではなく、日本の知恵や技術、文化をもって他国と協力しながら持続可能な社会を目指すことができる。バナナペーパーはまさにそれを体現する素材なのです」(エクベリさん)
また、それは吉澤さんが考える「ku・ru・ru」のコンセプトにも合致するという。一枚の紙を丸めて輪にし、両端を組み合わせる「ku・ru・ru」には、もともと「絆」「つながり」という意味が込められている。日本とは遠く離れたザンビアの地とのつながりを背景とするバナナペーパーが、その意味合いをさらに強めるからだ。
ザンビアでバナナの茎の加工作業に携わる人たちは、日本から持ち込んだバナナペーパー製の「ku・ru・ru」を見て歓喜の声を上げたという。
ともに認め合い、分かち合う気持ちが、ザンビア発・日本製の紙の中に息づいている。
ライター 石田 純子
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