参拝に訪れた神社仏閣で印を受ける「御朱印集め」に熱中する人が増えている。
印影に漢字や梵字を組み合わせた御朱印は、凛とした美しさがあり、まるで小さなアートのようだ。
御朱印集めの広がりとともに、そこで用いるノート「御朱印帖」も、
使いやすい新感覚のものが次々と現れている。
御朱印はもともと写経を納めた証しに神社やお寺から受けるもので、持参した帳面に直接書いてもらう場合と、紙に記されたものを受け取る場合の2通りがある。いずれにしてもそれを記し、保存するための「御朱印帖」は必需品だ。
御朱印を受ける習慣は昔からあり、御朱印帖もそれ自体の歴史は古い。しかし最近になって女性を中心に愛好家が急増したことから、それぞれの好みに合った使いやすい御朱印帖を望む声が上がるようになった。
そこで注目を集めているのが、株式会社8175(京都市中京区)が製造販売する「御朱印帖+」のシリーズである。カラフルな布張りの表紙は全部で36柄。四季や干支をテーマにした馴染みやすい柄や、京都の風景を迷彩風にアレンジしたポップな柄など、レンジは広い。いずれも伝統と現代性が絶妙にミックスされた仕上がりだ。
もちろん「持ち歩きやすい丈夫な造りで長期保存に適する」という、本来の目的に叶う品質も見逃せない。本文用紙は福井県の越前奉書紙を使用。表紙は綿織物で有名な滋賀県高島産の帆布に、友禅染に起源を持つ京都市伏見区の染工所がプリントを施している。
いずれも「国産」にこだわった結果、このような製造方法になったのだという。
また、なるほどと思わされるのが、紙の片側を綴じたノート型ではなく、本文用紙をびょうぶ畳みにして硬めの表紙を付けた「経本綴じ」に着目したことだ。
「ノート型ですと、御朱印を何枚か貼り付けたときにページが厚くなり、綴じ目と反対側が扇形に開いてしまいます。しかし経本綴じなら片側だけが開くことはない。平らに収まるので、御朱印帖の変形を気にせず使えます」と、8175代表の益田健太郎さんは説明する。
経本綴じにしたことで新しい展開もあった。びょうぶのように立てて置けるので、集めた御朱印をしまい込まずに、部屋に飾るといった使い方が新たに提案できるようになったのである。
「飾りやすく、広げたときの一覧性も良いので、本来の用途のほか、旅の写真やチケット類を貼ってトラベルログにしたり、コラージュ作品の台紙にしたり、ミニアルバムのように子供の写真を貼って、飾ったり持ち歩いたりすることもできます。『結婚式の芳名帳にしたい』という声もありましたね」(益田さん)
本文用紙に使用した越前奉書紙は古くから公文書などに用いられ、丈夫で変質しにくいという特徴がある。それが御朱印を受けるのに適しているだけでなく、結婚式のような大切な儀式であっても、安心して使えるという利点につながっているようだ。
また、こうした用途の広がりを踏まえ、表紙柄のバリエーションをさらに増やす計画もある。クリエイターとのコラボデザインを加えるほか、SNSや公募サイトを通じて一般からもデザインを募り、現在36柄のラインアップを今年中に50柄まで増やす予定だ。
「例えば乗り物のような、子供が喜んで持ってくれる柄をラインアップに加えたいと思っています。というのは、家族旅行の途中で御朱印を受ける人も多く、そんな人たちが子供と一緒に使える柄を望んでいると伺ったのです」(益田さん)
益田さんや製造に関わる職人さんたちの感触では、御朱印集めは一過性のブームではなく、信仰と旅を背景にした習慣として定着していく兆しがあるという。
一般に、紙に記録を残すことは、次の行動を促し、習慣づける仕掛けになると言われる。御朱印帖もまた、信仰と日常をつなぎ、次の参拝へのきっかけを作る楽しい仕掛けなのだろう。
ライター 石田 純子
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