日本紙パルプ商事は、2023年10月27日に「OVOL Bridges 2023 ~The 2nd Paper Merchants Forum~」を、パレスホテル東京にて開催しました。2018年に続く2回目の開催となる本フォーラムでは、当社の顧客であり、重要なビジネスパートナーである全国の紙卸商の経営者をお招きし、「卸商経営の今後の課題」と「紙の役割と価値を発見・再認識する」をテーマに、有識者によるセミナー、出版・教育、カタログ、パッケージ分野において紙を使用されている経
営者の方々によるパネルディスカッションなど、多様な切り口から情報発信を行ったほか、紙卸商経営者による座談会を行い、最後に当社としての「紙の価値普及に向けた今後の取り組み」について表明を行いました。第1回を上回る455名の皆様にご参加いただき約半日にわたって開催された本フォーラムの様子をお届けします。
第1部では各界から3名の有識者をお招きし、「生産性向上と人的資本経営」「DXによる事業変革」「バックキャストによる経営戦略」など、卸商経営者の皆様にとって有益なテーマについてご講演いただきました。
翁 百合 様
㈱日本総合研究所
理事長
「日本の非製造業の抱える課題と今後の方向 ―生産性向上と人的資本経営」
今井 康之 様
ソフトバンク㈱
代表取締役副社長兼COO
「デジタル化時代の紙卸商―DXがもたらす事業変革への道」
宮原 博昭 様
㈱学研ホールディングス
代表取締役社長
「事業承継問題とM&A経営~V字回復への道 バックキャストによる課題解決と目的達成」
出版・教育、カタログ、パッケージ等、多様な分野で紙を使用されている4名の企業経営者にご登壇いただき、「紙の機能・役割が生み出す価値の再認識」をテーマに、各社の具体的な事例を交えながらパネルディスカッションを行いました。進行役として、当社企画本部の佐々木が参加しました。
パネルディスカッションは「紙の機能・役割が生み出す価値について」というテーマを皮切りに幕を開けました。4名の登壇者により、各社の事例やデジタル化の影響等も交えながら、多様な視点から紙の価値についてご意見をいただきました。プログラム後半は「紙の価値を拡げていくために行うべき取り組み」を議論する場となりました。各テーマに対する登壇者のご意見や取り組みを、抜粋してご紹介いたします。
登壇者 | テーマ 「紙の機能・役割が生み出す価値について」 |
テーマ 「紙の価値を拡げていくために行うべき取り組み」 |
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小野寺社長 | 紙にこだわった文芸誌「spin / スピン」の刊行を2022年より開始(画像1)。文芸誌としては異例の各号1万9千部を発行しており、紙ならでの「手触り」が若い人にも評価されている | 今の若い人たちにとって、書店に行き、紙の本を読むという行為は当たり前ではない。「BOOK MEETS NEXT」(画像2)をはじめとする書店へと足を運ぶきっかけ作りとなる取り組みを、出版社と取次会社が一丸となり積極的に行っていく |
宮原社長 | 学習面においては、算数のひっ算の「書く」行為や国語の「読む」行為などに、デジタルよりも紙が優位に働く面があると感じている | 日本人の約半数が「1カ月に1冊も本を読まない」というデータがある。読書量がトップになれば、紙の需要は今よりも増える。日本人の読書量・勉強量を増やしていきたい |
村田社長 | 紙はデジタルと比較した際に俯瞰性に優れた媒体である。また、模造紙やポストイットを使用するワークショップにおいては、紙というフィジカルな物体だからこそ誘発する人と人とのコミュニケーションがあると実感している | 今回紙卸商の社員向けに実施したワークショップ(画像3)では「紙を大量に流通させること」への意識が強い点が気になった。「10年後に紙を使うユーザーをいかに増やすか」に意識を向け、紙のよさを伝える「紙育」を行っていくことが大切 |
矢野社長 | 紙パックウォーターは、アルミやペットボトルと比較した際に環境負荷の低さの他、減容率の高さやリサイクル性の良さが紙素材のパッケージのメリットである。加えて、肌触りの良さ、アート性といったところにも紙の価値を感じる | 他業種からも紙素材のパッケージングについて問い合わせが届くなど、紙のリサイクル性はまだまだ知られていない印象。業界が一丸となり、より強く世の中へと発信していくことが必要 |
(画像1)紙にこだわった文芸誌「スピン」(河出書房新社)
(画像2)本との新しい出会いを届けるイベント「BOOK MEETS NEXT」
(画像3)紙卸商各社の若手が参加したワークショップ (協力:デジタル・アド・サービス)
パネリストの皆様の深い見識を受け、当社佐々木からは「紙を扱う会社として、今一度紙という素材に誇りを持ち、紙流通業界全体が一丸となり今後の紙の普及に向けた取り組みに力を入れていきたい」との決意が述べられ、約1時間に及ぶ第2部は幕を閉じました。
「紙の価値を広めるための取り組みについて」をテーマに、各地からお集まりいただいた5名の紙卸商経営者にご登壇いただき、当社社長渡辺も交え、意見交換を行いました。進行役として、当社卸商・印刷営業本部 松浦が参加いたしました。
本座談会は、「紙の価値は果たして世の中へと伝わっているのか」という問題意識、および「紙の価値の普及活動の必要性を参加者の皆様と一緒に考える機会を設けたい」という当社の想いをもとにテーマを設定しました。座談会は2023年7月に当社が実施した「消費者の紙に関する意識調査」のアンケート結果をもとに進行しました。本アンケートは、関東・中部・関西に居住する20~60代の男女900名を対象に、「紙とデジタルの比較」「プラスチックの代替素材となる紙」など、生活・教育・環境にまつわる11項目を調査したものです。アンケート結果からは、幼児教育においてはデジタルと比較した際に紙媒体の好感度が高いといった消費者意識のほか、まだまだ紙がサステナブルな素材であるということは認知されていないという実態が浮かび上がりました。
これらの結果を受け、大丸の藤井会長からは「タブレット端末の普及やテレワークといった働き方の多様化を考えると、OA用紙をはじめ紙の使用量が増えるということは難しいことを実感している。紙の持つ『親しみ易さ』が、紙が使われ続ける理由になるほか、紙の環境性の高さをより世の中へと周知していきたい」との発言が、また、永井会長からは「一般の方には『紙は木を切って作られる素材』というイメージが根強いことが理解できる。大学の寄付講座や小学校の工場見学などをはじめ、業界として継続的な取り組みを展開することが重要である」とのご意見をいただきました。
その後、実際に登壇者の皆様が実施されている社会に向けた紙の価値普及と啓蒙に関する取り組みをご紹介いただきました。以下に3社の取り組みを抜粋のうえご紹介します。
「昨年から『形を目指さない工作室 チョキぺタス』を開催しています。紙を中心に、布や紐、カプセルといった端材を材料として、子どもたちに好きなように工作してもらう取り組みです。あえて形を目指さないことを大事にし、子どもたちの独創性を引き出し、リアルな体験を提供しています」(中庄・中村社長)
「地元愛知県の小牧市・豊山町の配布教材『小学生のためのお仕事ノート』に自社の物流センターや紙の加工工程について掲載いただいています。工場見学も受け入れており、課外学習の一環として紙商の仕事に興味をもってもらえるような機会づくりを行っています」(アクアス・大河内社長)
「熊本地震後に設立されたスーパーウーマンプロジェクトと2017年にコラボし、雇用創出と紙の新たな活用の方法を探るべく、ギフト用の紙製の花『スーパーフラワー』を開発しました。特に紙製の胡蝶蘭は生花と違い贈答後も枯れないという特性が評価され、徐々に売上も伸びています。また、この活動に伴い、スーパーフラワー協会を設立し、講習を通じての作り手の育成にも取り組んでいます」(レイメイ藤井・藤井社長)
紙の需要減少に対して問題意識を持ち、知恵と工夫を持って対峙されている各社の取り組みについて、参加者の方々も熱心に耳を傾けておられました。 その後、松浦より当社が今後行っていく紙の価値普及に向けた3つの取り組みについて表明を行いました。
プログラム全体の締めくくりとして、当社社長渡辺が「紙の持つ機能・役割・価値をいろいろな場面で発信してきたが、本フォーラムを通じて多くの皆様から貴重なご意見を頂戴し、改めて紙の価値について再認識する機会となった。我々紙流通業界が一丸となり、アクションを起こすことで、世の中に埋もれている潜在的な紙の需要を掘り起こしていくとともに、人的資本経営やDXを推進し、その経験や成果を卸商の皆様にも共有のうえ業界に貢献していく」との、本フォーラムに対する所感と今後の取り組みに対する決意を述べ、第3部は幕を閉じました。
会場前のホワイエでは、製紙メーカーやお取引先、また、当社グループが提案する環境対応商材の展示コーナーを設置しました。参加者の皆様が展示を眺めながら、担当者と熱心に商材に関する情報を交換する姿が見られました。
また、入口には愛媛県立三島高等学校書道部による「紙」の文字を使った書道作品を展示しました。「私紙(わたし、わたくし、わたくしのかみ)」「紙道(しどう、かみのみち)」は、いずれも日本紙パルプ商事が紙の魅力を伝え、広めるという意味を込めて作った造語です。本フォーラム用に特別に制作いただいた二つの作品が、会場に華を添えました。
日本紙パルプ商事は、今後も紙の価値向上に向けて社会に積極的に提案・発信を行うとともに、このような取り組みを当社の企業価値向上につなげてまいります。
※2018年に開催致しました第1回 フォーラム「OVOL Bridges 2018 ~Paper Merchants Forum~」概要は下記の通りです
開催日:2018年11月29日(木) 会場:日本橋三井ホール 参加者数:326名
● 第1部パネルディスカッション「海外における紙卸商の取組を知る」
当社海外グループ会社の経営者5名をパネリストとして、各市場における価格決定プロセスや、新規事業の取り組み等各社における施策や事例を紹介しました。
● 第2部プレゼンテーション「紙業界の業務効率化へのソリューション」
㈱JP情報センター(現OVOL ICTソリューションズ㈱)、アライズイノベーション㈱より、業務効率化のためのITソリューションをテーマとして、AIによるデータ入力支援サービス等各社の事例を詳しく紹介しました。
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