本来、昨年2020年度より新たな中期経営計画を開始する予定でしたが、直前に新型コロナ感染症のパンデミックが始まり日本を含む世界経済に急ブレーキがかかりました。また、収束までには相当の時間を要するとの見方が大勢であったことから、新中期経営計画の始動を一年延期し、当社においても2020年度を緊急事態と位置付け、グループ企業理念を徹底尊重し、過去に例を見ない規模での激しい落ち込みが予想される単年度利益の底上げに全力を注ぐとの方針のもと、販売価格の維持とあらゆるコストの削減を徹底しました。
その結果、2020年度の連結業績は、売上高4,629億円(前年比▲13.4%)、経常利益89億円(前年比▲8.7%)となりました。コロナ影響を直接被った国内外の洋紙卸売事業と環境・原材料分野で苦戦を強いられましたが、前述の緊急時対応の成果が十分に反映された結果であると考えています。
一方、緊急時故の、あるいはNew Normalを受けての需要、商機、事業、投資機会を見出すことができ、大型・斬新な案件でプロジェクトとして具体的な検討が進められているものもあります。これらは今後の新たな事業展開や業務改善・効率化の原動力になるものと確信しています。
このようなコロナ禍における、当社の緊急事態の一年を前提として、『長期ビジョン2030』を策定し、3つのビジョンを掲げました。
1.世界最強の紙流通企業グループになること
売上金額の単純比較では、当社グループは世界第3位規模の紙流通企業グループと推測しています。
しかしグラフィック用紙など、世界全体の需要がむしろ縮小に向かう分野において数量規模、売上金額、そしてシェアの拡大より、価格や利益を大切にし、業務効率や資本効率を上昇させることが、多くのステークホルダーに期待され求められているものだと考えています。
そしてそれらを可能にするためには、価格以外の武器を持つ必要があり、それはまさしく当社の機能と付加価値を高めることで他社との差別化を図り、取引先の満足度を高めることに他なりません。
世界を舞台に、必要な場所で必要な時に必要なもの、最適なものを提案し、供給出来る世界最強の紙流通企業グループを目指します。
2.持続可能な社会と地球環境に一層貢献する企業グループになること
当社グル-プはこれまでもエコロジカルな素材である紙の販売に加え、古紙を活用した板紙や家庭紙の製造、古紙の回収・販売、再生可能エネルギー事業等、サスティナビリティに大いに貢献して来たと自負しています。
しかしながら、世界的にSDGs対応や脱炭素に向けた行動が強く求められ、その対応を怠ると企業活動にも直接悪影響が出ることも危惧される時代となってきております。今般のコーポレートガバナンスコードの改定も踏まえ、早急にSDGsや脱炭素への対応を形のあるもの、目に見えるものにしていきます。
3.紙業界の枠を超えたエクセレントカンパニーになること
これは、現在の分野・事業領域にとどまらず、今すぐに他分野・他事業領域へ進出していくという意味ではありません。
もちろん、必然性があれば、そのような可能性も検討しますが、私たちが目指しているのは、紙業界の枠を超えて社会の中で広く認知され評価される企業グループになることです。つまり、事業分野は、当面現在の5つの事業領域の範囲でも構いませんが、その収益力、資本効率、財務基盤、人事制度、働き方、社会・地域貢献、環境対応、取引先満足度、株主満足度、従業員満足度などにおいて、紙業界以外も含め、世間に広く『優良企業』『秀逸な企業』として認知、評価されるようになるということです。
そして、これが今後の優秀な人材の確保、事業展開の拡大や収益力の向上にもつながっていくものと確信しています。
以上3つのビジョンを成し遂げることで、連結経常利益250億円という利益目標は達成できると考えています。
そして『長期ビジョン2030』に向けての最初の三年間の『中期経営計画2023』では大きく二つの基本方針を設定しました。
一つ目は、『New Normal,新たな価値観の中での付加価値の創造』です。
これはコロナ禍のマイナス影響と市場や需要構造のNew Normalを意識し、世界最強の紙流通企業グループになるために私たちが実行すべき事を示しています。長期ビジョンでも掲げているように、他社が真似できない機能の強化、付加価値の創造、そしてグループ内各社ならびにお取引先様の持つアセットとの有機的な結合を主導することによる新たな価値の創造を推し進めます。
また、コロナ禍により、紙や紙製品が持つ様々な価値が逆に見直された部分も少なくなく、また社会全体の質が今後更に向上していけば、個人の生活、人間の心の充実、知育・教育などの面において、アナログの価値、リアルの価値も逆に高まっていく可能性は大きいと考えます。当社としては、様々なイベントや事業活動を通じて、そのような可能性や気付きを社会に発信し、紙需要のすそ野拡大も図ります。私たち自身が機能と付加価値を持って変化し、お取引先様を巻き込み、そして社会に影響を与えていきたいと思います。
二つ目は、長期ビジョンで掲げた『紙業界の枠を超えたエクセレントカンパニーへの進化』を推進する具体的取り組みを早急に実践していきます。
この二つの基本方針の元、中期経営計画最終年度となる2023年度の連結経常利益目標を150億円としています。
私たちは、グループ企業理念を常に大切にしながら、『長期ビジョン2030』への第一ステップとなる『中期経営計画2023』の達成に向けてグル-プ一丸となって事業活動に取り組んで参ります。ステークホルダーの皆様にはより一層のご理解、ご支援を頂きますようお願いいたします。
2021年7月
代表取締役社長