監査役の役割・責任は、株主の負託を受け、取締役の職務執行、つまり経営の監査・監督をすることにより良質な企業統治体制を構築するものであると捉えています。常勤監査役としては、経営会議やサステナビリティ戦略会議などの重要会議に出席し様々な案件の内容を把握して、必要であれば執行側と議論をおこない、その内容を監査役会のみならず社外取締役にも共有しています。
その中で、現在、特に注力している点はグループガバナンスです。当社は業容拡大に向けたM&Aを活発化させています。ここ数年で見ても国内外でグループ会社が増加しているため、経営監視を十分に機能させるべく、グループ会社監査の取り組み強化を推進しています。具体的には、毎年、国内外のグループ会社数社を訪問しヒアリング等によりガバナンスが適切に機能しているかをモニタリングしています。また内部監査室や監査法人との連携、子会社監査役連絡会を通じて、監査プロセスやチェックリストの共通化や会計監査や業務監査の勉強会、情報交換などを行っています。
当社には長い歴史で培われたビジネスモデルや強みが存在しますが、現在、それらを変革しよう、新しいことにチャレンジしようという気運が高まっており、変わろうとしていることを肌で感じています。そうした動きの中で、健全で持続的な成長と中長期的な企業価値の創出を実現し、社会的信頼に応えることが出来る体制の確立が監査役の責務であるという信念のもと、当社の変革を支えていきます。
私が社外監査役に就任した8年前に比べると、当社のビジネスや強みは拡大し、事業ポートフォリオも大きく変化しており、当社は次の成長ステージに移行しつつあると感じています。本年、公表した「中期経営計画2026」にも、それは表れており、2030年のありたい姿「OVOL長期ビジョン2030」をどのように実現して行くのかに向けた目標設定や具体的かつ野心的な仕組み・仕掛け作りなどに会社としてのスタンスそのものが大きく変わったことが示されています。特に財務戦略や株主還元・資本政策については、これまで以上にマーケットを意識した方針だと感じています。今後は、当社の成長戦略を投資家・ステークホルダーに充分理解して頂けるように努めていくことが大きなテーマになってきますので、マーケットへの発信をさらに拡充し、評価を獲得できるようなIR活動・コミュニケーションに期待しています。
その中で、近年加速している当社グループの事業拡大を支えるために、グローバル経営に見合った統合的な管理体制を固めてほしいと考えています。すなわち、適正な財務報告やコーポレート・ガバナンスの観点からは、グローバルレベルでのIT統制、財務報告や監査の仕組みの統一化を検討する時期にあると考えています。もともと、当社の財務報告の仕組みや内部監査部門は、プライム市場の上場会社として適切な水準を維持しており、高く評価しています。今後は、さらなる経営基盤の高度化に取り組み、内外の子会社から効率よく正確に、財務・非財務データを収集できる体制づくりを行うべきと考えております。そこに向けた対応を提言しつつ監督を行ってまいります。
私は、2023年に社外監査役という立場になってから当社を見た時に、思いのほか活動範囲が広い上に、市場がシュリンクする紙業界において成長を続けていることに、驚きを感じています。現在、当社は「中期経営計画2026」を推進していますが、その策定にあたっては、社外の視点から外側の枠を堅持できるよう努めました。一方、監査役が監査役として独立の立場であるということは、それだけで意味があると考えています。経営上の手続きのうえで一つクッションを入れることで、より精密なモニタリングが可能になるからです。
当社の監査制度はしっかり整備されていますが、独占禁止法に関わる不祥事があったことも事実です。これについては極めて重く受け止めて反省したうえで、これから常に刷新していこうという高い意識を役職員が持っていると見ています。また、監査役会への情報共有や、取締役会での議論を通じて常に改善する体制が確立されていることも、当社の特徴です。今後の大きな課題としては、事業がグローバルに拡大する中で、グローバルガバナンスの強化であると認識しており、常にリスクを念頭に置きながら、グループ全体にガバナンスを行き渡らせる姿勢をグループとして保持していかなければならないと考えています。引き続き、会社が伸びていける方向へと後押しできる監査を行っていきたいと思っています。
昨年 6月に社外監査役に就任後、この一年間で当社の収益構造や財務状況など全体像を把握することができました。当社に対しては、就任前から着実に成長を遂げ、企業価値を向上させている企業として捉えていましたが、改めて、社外監査役として全体を確認し、経営基盤がしっかりと構築できていると理解を深めました。ガバナンスにおいても、風通しの良い社風と監督機能が両立しています。この点は、今回の「中期経営計画2026」策定プロセスにも表れており、本中計の策定背景から目標、そして、その具体的な実行施策まで、取締役会および監査役会でしっかりとした説明と議論が交わされていました。 あえて課題を挙げるとすれば、今後は、サステナブル経営、人的資本経営など、いわゆる非財務情報の開示、周知をさらに強化していくべきだと考えています。ステークホルダーの皆様に当社グループの取り組みを的確に伝えられる仕組みを整えることで、良好な関係を築き、新たな価値共創につなげていくことを期待しています。また、事業成長に合わせて拡大を続ける当社グループの中には、中小規模の企業もありガバナンスや会計処理の高度化や、グローバルにおけるタックスプランニングなどのグループガバナンスの強化も必要です。当社は社長のリーダーシップ、役員の能力、適材適所の配置などの経営基盤がしっかりとしているため、今後さらにコミュニケーションを充実させ、グループ会社までガバナンスのグリップが広がっていくよう、提言を行ってまいります。