気候変動への対応Climate Change

当社グループは、気候変動が紙の主要な原料である森林資源の減少や、地球温暖化による物理的リスクおよび規制強化による移行リスクの増加、またそれらの対応に伴う財務的負担増加を引き起こす可能性があること、そして、当社グループを含めたサプライチェーン全体で排出する温室効果ガスの削減により気候変動への影響を最小化することが企業としての責務であると捉えていることから、グループ全体に大きな影響を与える要因として気候変動をマテリアリティの一つに特定しています。
当社グループでは、製紙加工事業を中心に、従来より温室効果ガスの排出量削減に取り組んでいますが、引き続き、グループ全体におけるさらなる省エネ化を推進するとともに、2050年カーボンニュートラルの実現に貢献すべく、取り組みを強化していきます。

当社グループは、気候変動への対応がグループ全体として喫緊の課題であると認識し、2021年6月にTCFD（気候関連財務情報開示タスクフォース）提言への賛同を表明すると同時に、「TCFDコンソーシアム」に参加、以降、気候変動が当社グループ事業に及ぼすリスクと機会についてシナリオ分析を行っています。シナリオ分析にあたっては、各セグメントに及ぼす影響を明確にするため、紙・板紙卸売、製紙加工、環境原材料、不動産賃貸、各々の事業セグメント※を4つの分野に分けて分析し、TCFDが推奨する「ガバナンス」「戦略」「リスク管理」「指標と目標」に基づき、下記のとおり開示します。
当社グループは、「サステナビリティ基本方針」のもと、気候変動への対応、温室効果ガスの排出削減への取り組みをより一層推進するとともに、TCFD提言に基づく情報開示を進めていきます。

当社は、サステナブル経営のより積極的かつ能動的な推進に向け、「サステナビリティ戦略会議」を設置しています。「サステナビリティ戦略会議」は、取締役会の監督のもと、グループ全体のサステナビリティに関する方針などの策定や戦略立案、ESG課題の解決・目標達成に向けたマネジメントを所管しています。気候変動に関しては、取り組みの進捗状況などを定期的に取締役会に報告するとともに、重要な事項については、取締役会で決議されます。取締役会にて決議された事項については、サステナビリティ戦略会議の下部組織であるグループ横断組織「OVOL サステナビリティ推進委員会」「OVOL 環境・安全委員会」に指示され、グループ内各事業拠点にて実践する体制としています。サステナビリティ戦略会議の事務局であるサステナビリティ推進本部が、グループ全体でのサステナブル経営の実務遂行を担っています。代表取締役社長は、「サステナビリティ戦略会議」の議長であり、環境課題に関わる経営判断の最終責任を負っています。

当社グループは、IPCC（気候変動に関する政府間パネル）や IEA（国際エネルギー機関）などの専門機関が作成した、気温上昇が1.5℃（2.0℃）に抑制される場合と4℃以上になる場合の2つのシナリオを用いて、紙・板紙卸売、製紙加工、環境原材料、不動産賃貸の4つの事業分野について、気候変動に伴うリスクと機会の抽出を行いました。気候変動がもたらすリスク・機会は、低炭素社会への移行に伴うリスク（移行リスク）と物理的な影響（物理的リスク）に分類され、これらのリスク・機会を事業戦略に織り込むため、財務影響を短期・中期・長期の観点で評価しました。

財務インパクトに関するシナリオ分析の結果から、移行リスクにおける炭素税の導入が、当社グループの製紙事業を中心に大きな影響を与えると想定しています。一方、温室効果ガス排出量の削減を推進することにより、その影響を軽減できると考えています。
物理的リスクでは、洪水・台風といった異常気象による国内グループ主要拠点の被害想定額は、1.5℃（2℃）および4℃シナリオで2～6億円程度と試算しています。また、当社グループのお取引先が甚大な被害を受けた場合、サプライチェーンにおける工場の操業停止や製品および原燃料などの輸送が寸断される可能性があり、試算額以上の被害が想定されます。

「サステナビリティ戦略会議」は、グループ全体での気候変動に関するリスク・機会の特定、対応計画の策定、実務遂行部門であるサステナビリティ推進本部を中心とした対応組織への指示、進捗の管理を行い、取締役会に報告します。取締役会は報告内容について承認もしくは改善指示を出し、適切なリスク管理が行われていることを監督します。また、サステナビリティ戦略会議にて審議された気候変動関連のリスク事項は、その下部組織である「リスク管理委員会」「OVOL環境・安全委員会」「OVOLサステナビリティ推進委員会」に指示され、グループのリスク管理に反映されます。

グループ内製紙会社への電力供給を目的としたバイオマス発電事業に参入以来、社会的要請が高まっているクリーンで安全な電力の安定供給を目的に再生可能エネルギーによる発電事業を行っています。
北海道釧路市においては、FIT のもと、太陽光発電事業（発電出力：20,000kW）による電力の供給を行っています。
また、木質バイオマス発電所の安定稼働に貢献すべく、2016 年に岩手県野田村において、再生可能エネルギー固定価格買取制度（FIT）のもと、木質バイオマス発電所（発電出力:14,000kW）を稼働。地域行政と連携し、地元産業の活性化につながる、公益性の高い事業を展開しています。
2018 年には、マレーシアにおいてPKS※の集荷と日本などへの輸出を行うOVOL New Energy Sdn. Bhd.を設立し、バイオマス燃料を国内向けに安定供給する体制を強化しています。