当社のガバナンスや内部統制は、継続して上場会社として十分な水準にあり、株主・投資家の皆様に安心していただけるような体制が整えられています。とりわけ、IT統制やリスク管理などは、グローバルレベルで通じるような進化・統一化に邁進しており、進捗を見守っているところです。
このような、良好なガバナンスを前提として、肝心のビジネスの状況に目を向けますと、「中期経営計画2026」の達成に向け、さまざまな具体策を打ち始めています。その第1弾として、買収という形でドイツ・フランスへの事業拡大があり、今後も第2弾、第3弾と新規事業投資が続くことになるでしょう。
社外監査役としては、新規投資の意思決定プロセスや、業績のモニタリングに加え、株主・投資家の皆様が当たり前に備わっていると期待されるであろう、ガバナンスなどの整備・運用状況についても注視してまいります。
これまでも当社はさまざまな買収を経ており、必ずしもすべて成功したわけではないでしょうが、各社で必要な管理体制をきちんと構築し、総じて事業は順調に推移しています。当社の強みは、なんといっても長寿企業として、ステークホルダーとの長期的関係を大事にしながら、地に足をつけて経営し、決算情報には表しきれていない無形の資産を多く蓄積していることです。派手さや急速な成長・変化はないかもしれませんが、紙需要の変化に対応すべく自己変革し、着実に目標を達成してきた実績があります。私は、国内外に広がった当社グループの基盤であるガバナンスに貢献できるよう努めてまいります。
社外監査役に就任して2年が経ちました。この間、当社の事業領域の広さと、縮小傾向にある紙業界においても果敢に成長を目指す姿勢には、今なお驚きと敬意を抱いています。現在当社は変化の過渡期にあり、業務や組織の拡大が進むなかで、それに見合った管理体制の整備が追いついているかについては、今後も注視が必要と考えています。
私は法律の専門家として、常に法的見地から客観的かつ中立的な判断を行うことを意識しています。個人的な価値観が影響しないよう心がけ、問題があれば遠慮なく指摘することこそが社外監査役としての役割だと認識しています。その視点で、当社のコーポレートガバナンスは概ね適切に機能しており、課題が表面化した際も、組織が偏りなく迅速に対応している点は評価できるところです。ただし、グローバル展開が進む今、監督体制もそれに即したスピードで進化する必要があります。特に、リスク発生時に即座に管理部門へ情報が共有され、機動的な対応が取れる体制づくりが今後の重要課題と捉えています。
企業の発展には業務拡大や利益の増大が欠かせませんが、それが「適法」かつ「適正」であることが大前提です。むしろ現代においては、こうした健全な活動こそが持続的な成長と企業価値の源泉であると確信しています。今後も独立した立場から冷静な監査を行い、信頼される企業経営の実現に貢献してまいります。
社外監査役としての2年間で私が重視してきたことは、数値の裏付けだけでなく、現場と経営の接点に身を置き、実態を捉えることです。財務・税務の専門性を基盤に、経営判断の土台となる情報の整合性や開示の適正性に目を配り、実効性のあるガバナンスの確立に取り組んできました。
社外監査役が往査を行うことは比較的めずらしいかもしれませんが、当社では積極的にグループ会社への往査を行っています。私自身も複数拠点を訪問し、現場の担当者と率直に意見を交わしながら、内部統制や会計処理の実態を把握してきました。中小規模の国内子会社には、システム整備やリスク管理体制において改善の余地があり、現地での確認を通じて、グループ全体の統制力向上に寄与することが、社外監査役の重要な役割だと考えています。
また、人的資本経営といったサステナビリティに対する取り組みも進んでおり、経営陣が自ら主導し経営戦略と一体化した推進がされている点は特筆に値します。女性役員の存在や、組織内での率直な対話が意思決定に活かされていることも、今後の成長を支える大きな力になると感じています。
サステナビリティ経営が企業価値創造の基盤となるなか、監査役の役割もより高度かつ多様な視点が求められています。私たちは、今後も健全な企業統治を支える一員として、持続可能な社会と企業の共創に貢献してまいります。